日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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御堂筋のイチョウ並木はすっかり色づいていた。その街路樹は、阪神、オリックスによる優勝パレードの熱気に包まれ、さらに赤黄色に染まったような気もした。

午前はオリックス、午後には阪神のオープンカーを待った。気温も20度まで上昇したから、カシミヤのハーフコートを脱いだ。そしてビルとビルの間からVムードに触れた。

インバウンドの外国人観光客から「何が起こるんだい?」と聞かれた。「関西のヤンキースとメッツがパレードするんだよ」。そんな会話にニューヨーク・マンハッタンを思い出す。

かつて関西には、阪神、阪急、近鉄、南海の4球団が存在する時代があった。親会社の大手私鉄は、娯楽を提供しながら沿線開発を進めたのだ。そのうち撤退、合併で2球団だけが残った。

大阪と三宮。阪神とオリックスがセ・パ両リーグを制し、同日、同時刻に祝賀パレードを行ったことに意味があった。阪神の出発地点では岡田彰布がマイクを握った。

「わたくしごとなんですが…、この右側にあったのは、60年前に6年間、小学生生活を過ごした地なんです…。大変光栄です」

このあたりに同級生がいて、お付き合いを大事にしているのを前から聞いていたから、思い出の地に感情が高ぶっているのだろうと思った。

複数のヘリコプターが上空を飛び交い、のべ100万人のファンで騒然となったビッグイベントは無事終了する。中嶋聡も「すごい人。いい経験です」と感想をもらした。

阪神、オリックスが盛り上がるのは、現場だけではなかった。このほど両チームのOB会も19年以来、約4年ぶりに復活する。阪神OB会長に就いて初の優勝を経験するのは川藤幸三だ。

「去年もやるか、どうか話し合ったんやが、コロナも完璧じゃなかったし、もう1年伸ばそうということになった。今年はこそこそせんと、堂々とやれるやないか」

相変わらず郷里の“福井弁”で語った川藤も「よぉ優勝してくれた」とうれしそうだった。OB会当日は、監督のシーズン功労賞をはじめ、計9人が表彰されることになっている。

かたや「阪急・オリックスOB会」も12月初旬に再開となる。こちらも会長が山田久志、副会長の福本豊、加藤英司…と、大物レジェンドが顔がそろうから盛況が予想される。

名物オーナーだった宮内義彦が「勝てないのは、わたしのせいかも」と自虐ネタを披露したこともあったが、今やリーグ3連覇の常勝軍団になったから、OBも誇らしいはずだ。

つわものどもが夢の後、御堂筋の夜は、イリュミネーションの光で彩られた。在阪2球団の歓喜が、少しでも社会に豊かさを運んだとしたら、それはプロ野球の使命を果たしたといえるのかもしれない。