猛虎の勢いが止まらない。大卒8年目の阪神熊谷敬宥内野手(29)が中日戦(バンテリンドーム)の3回にプロ初本塁打を放った。プロ通算232打席目で飛び出した初アーチに虎ベンチはお祭り騒ぎだ。チームは3連勝で優勝マジックが1つ減って「6」。リーグ優勝&日本一に輝いた23年以来、2年ぶりの貯金30に到達した。最後のゴールを見据えた藤川球児監督(45)の「球児流マネジメント」がチームの勢いをさらに加速させる。
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佐藤輝の1発の余韻が残っていたバンテリンドームに、もっと希少価値の高い放物線がかかった。間近で見届けた名古屋の虎党も一瞬、キョトン。視線の先で軽快にダイヤモンドを回っているのは、熊谷だった。
3回、2-0と先制してなお1死一塁。左腕マラーのフルカウントからの6球目。カット気味に入ってくる球をとらえた。「コンパクトに。大きいのは狙っていなかった」と言うが、小さな体に強くはじかれた打球は左翼席へ。プロ初本塁打だ。仲間に「おめでとう」と口々に祝福され「自分が一番びっくりしています。思いのほか飛んでくれました。入ってくれてうれしい。慣れていないので、普通に走っていました」。29歳が野球少年のように驚きと喜びを表現した。
大卒8年目、232打席目での1発。これまでは代走や守備固めがメインだったが、今年は一気に活躍のフィールドを広げた。藤川監督の固定観念を排した方針の“代表作”といえる。左翼を固定せず、若手の高寺や捕手の中川、そして内野手の熊谷も、左翼の1枠を争いながら台頭した。
遊撃も同じだ。一時は小幡がレギュラー決定とみられたが、そうはならなかった。出れば存在感を示す熊谷は、8月に主に遊撃でスタメン12試合。その流れで、自己最長の6試合連続で先発中だ。ユーティリティーの枠を飛び出した。藤川監督は「努力をやめないのは、年齢関係なく重要。力を蓄えながら準備して、向上心を持っているから伸びてくる」と評した。
数字に表れない特殊能力は勝負根性だろう。昨年はこのバンテリンドームで、投手を使い果たした場合に備えてブルペンで準備に走った。緊急時に「捕手」の準備に入ったことは1度や2度じゃない。もちろん投手も捕手も“素人”だが、言い訳も弱音も吐かない。「もうチームが勝負にいっているわけだから。経験なんてなくても、やるしかないんで」。そのメンタルを首脳陣は評価する。
セ・リーグで唯一勝率5割を超えている歴史的な独走。貯金はついに30に達した。新人監督では球団史上初のこと。経験豊富なレギュラー陣と、ニューフェースたちが力を結集しながら突き進んできた。優勝マジックは1つ減って6。最高のカウントダウンが進んでいる。【柏原誠】
▼阪神が貯金30に到達。阪神の貯金30到達は日本一となった23年以来、8度目。就任1年目で貯金30に到達した監督は昨季の小久保監督(ソフトバンク)がいるが、セ・リーグでは55年野口監督(中日)81年藤田監督(巨人)02年原監督(巨人)に次ぎ、藤川監督が4人目。阪神の新人監督では1リーグ時代を含めてもおらず、球団史上初めてだ。なお、新人監督では15年工藤監督(ソフトバンク)が貯金49、セでは02年原監督が貯金35まで到達しているが、藤川監督はいくつ貯金を増やせるか。



