<中日8-7横浜>◇13日◇ナゴヤドーム

 落合中日が今季3度目のサヨナラ勝ちを飾った。3回までに7失点する苦しい展開ながら、森野将彦内野手(31)が8回に通算100号となる同点2ランを放って振り出しに戻すと、延長11回、谷繁元信捕手(39)がサヨナラ二塁打を放った。4時間26分の死闘をリリーフ陣の粘りと、打線の執念で制して再び巨人と並んで首位に立った。

 まさに執念の勝利だった。7-7同点で迎えた延長11回2死一、二塁。谷繁が横浜の守護神山口のストレートをたたいた。「外野が前進していたから、バットに当てれば何とかなると思った」。打球は狙い通りに右翼頭上へ。必死で背走した横浜吉村が捕球できなかった瞬間、サヨナラの歓喜が爆発した。

 「勝ちゲームでもあるし、負けゲームでもあるな」。落合監督は深く息をつくと、苦笑いで4時間26分の激闘を振り返った。先発山井が3回までに7失点。それでも打線が横浜先発ランドルフから5点を奪うと、リリーフ陣も踏ん張って追加点を阻止してゲームをつくった。そして、勝利への活路を開いたのは新しいリーダーだった。

 2点を追う8回、先頭の荒木が遊撃への内野安打で出塁した。左足故障から復帰したばかりの男が見せた気迫のヘッドスライディング。後ろで見ていた森野の闘志に火をつけた。2死一塁、横浜牛田のフォークをとらえた。「荒木さんが必死になって何とかしたいと思っていた。最高の結果になりました」。高々と舞い上がった打球は森野の願いを乗せたように伸びて、ファンで埋まった右翼席に着弾。史上260人目の通算100号は価値ある1発となった。

 09年末に新選手会長に就任。主軸として打線を引っ張るとともに、グラウンド外でも先頭に立つ。この日スタンドには空席が目立っていた。平日のナイターということもあって発表された観衆は24215人。ナゴヤドーム広報部によれば実数発表とした06年以来、25000人を割るのは初めて。森野にとって最も見たくない光景だった。

 「1番(のサービス)はプレーですよ。でも今の時代はそれだけではどうにもならないこともある。去年、スタンドに空いているところがあるのを見て寂しかった。満員の球場で野球がやりたいですから」。ファンからの要望を集める「目安箱」の設置を球団に提案し、改革を推し進める。一方で最大のサービスは自らのバットで運ぶ勝利だという信念がある。サヨナラ勝ちへとつながる1発はまさに最高のファンサービスだった。

 「なかなか先発をうまくリードできない。何とかしたい。ただ、巨人に2つ負けた後、3連敗を止められたのは大きい」。谷繁は正捕手としての苦悩を抱えながらも、勝利の立役者となった。チーム状態は決してよくない。それでもV奪回への歩みを止めない強さがある。【鈴木忠平】

 [2010年4月14日11時6分

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