<広島3-6中日>◇29日◇マツダスタジアム

 ブーちゃんがチャンスをつかむ決勝打だ。広島戦でプロ初スタメンの中田亮二内野手(23)が、同点の6回1死一、二塁でプロ初打点となる適時二塁打。今季3連敗と苦手にしている広島バリントンを蹴散らした。打順変更、コーチの配置転換とテコ入れした落合博満監督(57)も「チャンスはいっぱい落ちている」と、期待に応えた選手たちにニンマリだ。

 ブーちゃんがチームに漂う閉塞(へいそく)感を打ち破った。試合開始30分前。マツダスタジアムにブーちゃんの名前が響き渡った。「6番ファースト、中田亮二」。昨季の日本シリーズで指名打者として出場したことはあるが、シーズンでは初のスタメン出場。背番号50は、目の前にぶら下がったチャンスをその手でしっかりとつかみ取った。

 6回だ。1死一、二塁の場面。広島バリントンの直球に反応した。ガッツリとつかまえたボールは左翼フェンスに直撃。勝ち越しの走者が生還した。プロ初打点をたたき出した。1打席目には鋭いスイングで左前打。今季、チームが3連敗と苦しんでいた苦手バリントン攻略のきっかけをつくり、108キロの大きな体をゆらした。

 中田亮

 みなさんにつないでいただいたので思い切っていった。(スタメンは)発表直前に辻コーチから言われた。やるしかないと思っていました。(バリントンは)特には意識していなかった。

 チームにとっては節目の試合だった。この日、石嶺打撃コーチが2軍に配置転換となり、代わりに高柳野手コーチが1軍打撃担当として呼ばれた。もともと中日にはコーチの1、2軍の区別はないが、落合監督がシーズン中のコーチの配置転換を実施するのは昨年に続き2度目。不振の打線を思い切った人事で、てこ入れした。だからこそ、何より白星がほしかった。

 さらには前日28日の阪神戦(甲子園)に続き2日連続で、オーダーを変更。今季初めて3番にグスマンを上げ、6番に中田亮を据えた。シーズンの分岐点とも言える一戦だった。

 ベンチ裏から出てきた指揮官はいつものように少しだけ笑みを浮かべた。

 落合監督

 チャンスはいっぱい落ちてるよ。それをものにするかしないかだけだ。

 かつて南海を率いた名将鶴岡一人氏は「グラウンドには銭が落ちている」と名言を残した。チャンスをつかみとるか、逃すかは自分次第。ブーちゃんは、しっかりとものにした。もう、つかんだから離さない-。ブーちゃんの愛らしい目が、ギラついていた。【桝井聡】