<オリックス4-3阪神>◇5月31日◇京セラドーム大阪

 虎党への“あいさつ”は鮮烈だった。西武からトレードで加入した高山久外野手(31)が、7番左翼で先発。1点を追う3回、第1打席でオリックス井川から同点ソロを左翼席に運んだ。シーズン途中加入の新戦力が初打席で本塁打デビューするのは猛虎史上初の快挙。左キラーの頼もしい男が巨人追走を後押しする。

 虎党に「阪神高山」を印象づけるには、十分すぎる1発だ。あの落合博満氏の現役時をほうふつとさせる神主打法から描いた放物線が黄色く染まった左中間席に着弾。「打ったときは信じられなかった」と自分でも驚く1号同点ソロアーチは、虎史上初となるシーズン途中移籍の初打席本塁打だ。

 ベンチ前ではスタンドに向かいナインと両手を突き上げた。試合前には「ここにいるのがまだ慣れないですね」と苦笑いしていたが、打ち合わせなしのぶっつけ本番で歓喜の決めポーズを完成させた。「まさか、自分があそこに参加するとは思わなかったですね」と照れ笑いで振り返った。その裏の左翼守備に向かうと、ファンの高山コールに迎えられた。帽子を取り深々と一礼し、「鳥肌が立ちました」。タテジマの一員として、ナインにもファンにも認められた瞬間だった。

 5月21日に左腕川崎とのトレードで西武からの移籍が決まった。10年には11本塁打もマークした左キラーとして、期待されての獲得だ。同29日のウエスタン・リーグ中日戦で1軍昇格を決める本塁打を放った。その際、足元には借り物のスパイクを履いていた。新調したスパイクがまだなじんでおらず、少し痛みがあったためで、1歳年下の狩野から借りていた。そのまま譲り受け、この日もそのスパイクを履いてプレーした。入団1週間でとけ込む順応力。人なつこさが周囲を引きつける。

 新スタートを切るのにはふさわしい場所だ。ルーキーだった00年4月15日、近鉄戦でデビューしたのも、ここ京セラドーム大阪。「意識はしてなかったですけど、思い返したら、そうだったな、というのはありましたね」。当時は代打で三振だったが、この日はビシッと決めて見せた。

 抜てきした和田監督も「いいスタートになったね。左に十分いけるというスイングを見せてくれた」とうなずいた。首位巨人を依然1・5ゲーム差で追う中、左腕相手の出場機会も増えそうだ。

 本塁打後は沈黙しただけに、満足などしていない。「そんなに甘くはないので、1日1日悔いがないように、ベストを尽くしていくだけです」。衝撃デビューで弾みをつけ、虎の左キラーに君臨する。【山本大地】

 ▼西武からトレードで加入した高山が移籍後初打席で本塁打。シーズン途中に阪神に移籍し初戦で本塁打は、00年7月4日のフランクリン(前日本ハム)が広島戦(大阪ドーム)で第3打席に記録して以来。他球団では巨人の大村三郎(前ロッテ)が11年7月1日中日戦(東京ドーム)で、シーズン中移籍初打席初本塁打した例がある。阪神に国内他球団から加入した選手の、移籍初年度の初打席初本塁打は、2リーグ分立後初。

 ◆高山久(たかやま・ひさし)1981年(昭56)11月16日、熊本県生まれ。九州学院では2度甲子園出場し、高校通算43本塁打。99年ドラフト1位で西武入団。00~03年は背番号1、04年に44に変更。10年に初めてレギュラー獲得。116試合で打率2割9分1厘、11本塁打、48打点をマークした。右投げ右打ち。177センチ、84キロ。