<阪神2-1ヤクルト>◇16日◇京セラドーム大阪

 頼もしい男の復活や。左膝を痛めて2軍調整中だった阪神西岡剛内野手(29)が1軍復帰し、劇勝を呼び込んだ。「1番二塁」で先発出場。6回の3打席目に中前安打を放つと、9回には先頭打者として内野安打で出塁。決勝のホームを踏んでみせた。

 興奮絶頂のホームインの瞬間、思わず片手を天に突き上げた。そのまま一目散にヒーローのもとへ駆け寄る。この勝ちだ。この喜びに飢えていた。歓喜のサヨナラ劇を導いたのは、紛れもなく1番西岡だった。

 「9回とか、僕が決めるんじゃない。塁に出るのが僕の仕事。初球から甘い球が来たらね。初球をバチンッととらえられたら、勢いがつくと思いました」

 不動のリードオフマンが存在感を強烈に示した。同点で迎えた9回。先頭で打席に入り、バーネットが投げた初球の外角球を強打する。三遊間を襲った痛烈なゴロは遊撃川島に捕られたが激走で内野安打にする。サヨナラ劇をお膳立てする助演男優賞モノの活躍だ。左膝痛で7月30日に出場選手登録を抹消された。20日ぶりの1軍復帰戦。6回には中前打を放っており、自らのバットで快気祝いだ。

 2軍でリハビリ中は自宅のテレビで1軍戦を観戦するのが日課になった。「チームは一生懸命、戦っている。毎日、テレビを見ているけど落ち着かない。早く復帰したい」と本音も吐露した。真心を込めて野球と向き合う姿勢は、鳴尾浜でのし上がろうとする若手に多大な影響を与えていた。

 前日15日の2軍紅白戦で実戦復帰。初回、二ゴロで一塁に駆け込む姿を見て、深く共感したのは遊撃を守っていたドラフト2位ルーキー北條だ。「凡打して一塁までゆっくり走るのではなく、全力疾走されていた。そういう姿勢だと思います。試合前には外野でダッシュもしていました」。通勤で用いる高級スポーツカーを見たある若手も目を輝かせる。「あそこまでなりたいですよね」。ただ復帰を目指して2軍で調整するだけではない。西岡の生きざまは後に続く若手への「道筋」になっている。

 背番号7は停滞気味のチームにとって欠かせない。「西岡なら何かをしてくれる」。そんな周囲の期待感は心強さにつながる。二塁守備では再三、ピンチに陥った能見のもとへ駆け寄った。開幕前の誓いを忘れたことはない。「登録された以上は必死にやっていきたい。また、エンジンがかかるというか、優勝するために頑張っていきたい」。たとえ首位巨人と大きな差があろうが、アクセル全開で目先の白星を奪いに行く。【酒井俊作】<西岡の復帰までの道のり>

 ◆前兆

 7月26日DeNA戦(甲子園)を左膝の痛みで欠場。29歳の誕生日だった同27日DeNA戦(甲子園)は試合前練習に姿を見せず、スタメン出場も5打数無安打だった。

 ◆登録抹消

 同30日に左膝痛のため、出場選手登録を抹消された。翌31日から鳴尾浜の球団施設でリハビリを開始。約2時間、治療に専念した。

 ◆復調

 8月6日、技術練習を再開。室内練習場でキャッチボールとティー打撃を行った。翌7日には室内でフリー打撃。9日に屋外練習を開始し、二塁ノックでジャンピングスローを披露。フリー打撃も実施。

 ◆ペースダウン

 10日に予定されていたシート打撃を回避。背中の張りが出て練習ペースを落とした。

 ◆完全復帰

 13日に室内練習場で技術練習再開。14日に屋外へ。15日の2軍紅白戦に出場し、左右両打席でそれぞれ安打。堅守&全力疾走で回復アピール。