<阪神2-13西武>◇29日◇甲子園

 四方八方からの大歓声、そのすべてに応えようと、阪神鳥谷敬内野手(32)は塁上で花束を受け取り、3度、頭を下げた。右翼、三塁、一塁側ベンチ方向へ。史上115人目の通算1500安打は、5回2死走者なしの第3打席で決めた。しぶとく三遊間を破る左前打。「その時、その時に仕事をしているだけで、積み重ねだと思う」。通算1453試合目。阪神一筋11年間で積み重ねた記録を、ファンも自分のことのように喜んだ。

 10年前の04年。プロ初ヒットは4月2日の開幕巨人戦だった。カウント0-2からの左前打に「(球種を)狙える状況ではなかった。追い込まれていたので、打ててよかった」とホッとした表情を浮かべていた。この日の節目もフルカウントから。成長を示すような鮮やかな流し打ちで、当時と同じ左前に運んだ。

 かつて、イメージする3番打者に「西武の秋山さん(現ソフトバンク監督)ですね。よく球場に見に行っていたのもあるし、強い西武の3番打者でしたからね」と語った。偶然にも、少年時代に通った西武球場で見てきた西武が相手。通算2157安打した憧れの人への歩みを刻んだ。

 「1打席1本しか打てないので、そういう意味ではこれからも初心を忘れずにやっていきたい」

 打点のように1度で複数は刻まれないのがヒットだ。過酷な遊撃で2年連続フルイニング出場を続ける鉄人にとって、安打数は継続のバロメーターともなる。大敗の中で、今季3度目の1試合4安打の固め打ち。野球人として、キャプテンとして。地道に数字を重ねていく。【松本航】

 ▼鳥谷がプロ通算1500安打を達成した。阪神の選手としては、和田豊が98年に到達して以来8人目。12球団の現役選手としては18人目の達成で、32歳11カ月での到達はこの18人中最速。鳥谷は1試合平均安打数は1・034本。このペースを維持すれば、2000安打達成は通算1935試合目。現状のシーズン144試合制が続き、鳥谷がフル出場を継続していれば、36歳となっている17年夏頃となる見通し。

 ▼鳥谷は西武の左腕菊池からの2安打目で1500安打に到達。通算打率は右投手2割9分2厘に対し、左投手にも2割7分1厘。