新日本プロレスのG1クライマックス27も、いよいよ後半戦に突入した。今や世界中が注目するプロレス界の一大イベントは、その期待を裏切らない戦いが続いている。7月17日、札幌の北海きたえーるで開催された開幕戦で、メインを飾った内藤哲也-飯伏幸太の激闘が、大会に勢いを与えた。

 2年ぶりに新日本マットに復帰した飯伏と、その不在の間に大ブレークした同期同士の戦いだった。試合前には内藤が「ほとんど試合もしていないレスラーが出られるほどG1は甘くない。過去の栄光だけで出てきたやつに負けるわけがない。第1戦は消化試合だ」と挑発。飯伏も「この2年間、誰にもできない経験をしてきた。その成果を出して大爆発する」と返し、ファンの注目を集めた。

 2人の戦いは、持ち前のスピードと過激なワザの応酬で盛り上がった。飯伏コールが始まると、内藤コールがそれをかき消す。ファンと一体となったプロレスは、2人の受けのうまさも相まって、すばらしい空間を作り出した。見る者を感動させる戦いだった。

 Bブロックの開幕戦となった20日後楽園大会では、ケニー・オメガ-鈴木みのる戦も見応え十分だった。さらに、23日町田大会の棚橋弘至-永田裕志の戦いは、見るものの心を打った。今大会限りでG1からの卒業を宣言した49歳の永田。そして同じ40代に足を踏み入れた後輩。新日本のエースの座を引き継いだ2人の戦いは、棚橋がリング中央で永田のほおを張り、最後ははり倒すシーンが印象的だった。「棚橋に殴り倒されたのは初めて」とかつての戦いに永田が思いをはせれば、棚橋は「永田さんの前ではいつでもチャレンジャー。それは変わらない」と先輩を立てる言葉を残した。

 G1の戦いを通して際だつのは、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカの存在感だ。初戦の矢野通戦から始まり、オカダのプロレスは、すごみを増している。相手の持ちワザをすべて受けきり、その上で相手を圧倒するように試合を決める。1・4東京ドームのオメガ戦から始まった絶対王者オカダの進撃はとどまるところを知らない。G1開幕直前のインタビューでオカダは「IWGPヘビー級王座の防衛記録も、IWGP王者としてG1を優勝するということも、ボクは全然考えていないんです。ボクは、ワザをかけるシーンとかが何回も再生されるような、印象に残るシーンにこだわりたいと思います」。それが、今のオカダのプロレスに現れている。

 G1の激しい戦いと、オカダの戦いは、プロレス界にかつてない歴史を刻むかもしれない。【桝田朗】