勝った力士の方に赤いランプがともる両国国技館の電光掲示板は、東西の2カ所にある。力士名が書かれたプレートは毎日、担当者の手作業によって付け替えられている。

観客が退場し、静まりかえった国技館内で、午後6時20分ごろから作業が始まり、約1時間かかる。2階席の手すりに安全ベルトを取り付け、担当者が約4メートルの特注脚立に上り、プレートを1つ1つ取り換えていく。脚立は特注品。段差のあるマス席にまたがって設置できるようにはしごの左右の長さが異なる。現在使用している脚立は2代目だ。

担当するのは田中電設株式会社の田中有積さんと合同会社SAN LIGHTの遠藤正敏さんにアルバイトを加えた3人。田中さんと遠藤さんは、一般社団法人労働技術講習協会の「フルハーネス型墜落制止用器」の講習を受け、高所作業ができる資格を持つ。取組時は、2階最上段の一角にある部屋で照明や電光掲示板の操作をしている。打ち出し後は、脚立を担いで東西の電光掲示板に向き合う。

西を受け持つ田中さんは「高所なので危険ですが、もう慣れました。怖さはないです。コツは別段ないのですが、場所の後半になると時間がかかります」と話す。脚立を移動させるには、1度降りなくてはいけない。そのため、番付に差がある取組が増える後半ほど作業に手間がかかる。東の遠藤さんは「お客さんが出た後にやるんで、誰も気付かない仕事です」と裏方に徹している。付け替え後に読み合わせをし、翌日も観客が入る前に確認をする。

両国国技館が落成した1985年ごろは、似たしこ名を間違えて掲示したこともあった。だが、クレームがくることもなかった牧歌的な時代だったという。

人目に付くあの電光掲示板は、アナログ作業にも支えられている。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

打ち出し後、担当者が手作業で電光掲示板の力士名を入れ替えている
打ち出し後、担当者が手作業で電光掲示板の力士名を入れ替えている