プロレスリング・ノア福岡大会(30日、福岡国際センター)で、GHCヘビー級王者の中嶋勝彦(33)に挑戦する田中将斗(48)は、ラグビーで培った瞬発力と突進力で必殺技のスライディングDを決める。

ロープ際から中央にいる相手に向かって突進し、強烈な弾丸エルボーで3カウントを奪う必殺技の原点は高校時代にある。和歌山東高でラグビー部に所属し、県選抜に選ばれたこともある田中。ポジションは最前列でスクラムを組むプロップ。その後、社会人でも活躍した。「瞬発力でモールや、ぶつかり合いで体力も使うし、スタミナも使う。今の体の強さもそこから来ている」。ラグビーでもプロレスでも大きなケガは06年の右肩脱臼くらいで「丈夫な体に生んでくれて感謝している」と話す。

06年のケガで半年離脱した際に、肉体改造に取り組み、自分のスタイルを変えた。「スタミナが一番心配だったので、走ったり有酸素運動を取り入れてスタミナをつけたら、いらない脂肪が取れた」。パワー系の技より瞬発力やスピードを重視し、スライディングDを生み出した。現在は所属のゼロワンとノアで月10試合程度をこなすが「しんどさは全くない。試合している時の方が調子を維持できる。試合でしか使わない技もある。月15試合でも全然大丈夫」と力強い。

8月にGHCナショナル王者の杉浦と自身の持っていたゼロワン世界ヘビー級王者のベルトをかけて戦ったが、35分の激闘の末に敗れた。今回は杉浦に再挑戦ではなく、中嶋のGHCヘビー級に狙いを定めた。「取られたからすぐに挑戦させろ、というような虫のいい話はない。もっと気持ちが高まった状態じゃないと(杉浦には)いけない」。10月の試合で丸藤を破った中嶋を見て挑戦を決めた。「ずっと待っていた万全の丸藤さんに勝利して、正直すごかった。でも自分は(9月の)N-1 VICTORYで勝利している。今いったら、すんなり決まるんじゃないかなっていうのはあった」と明かした。

もちろん、勝利した際には杉浦への再挑戦ももくろむ。「2つとも取れる自信がある」と話すが、今は目の前のタイトルマッチに集中。「歴史あるベルト。レジェンドたちと同じところに名前が入るチャンスなんてなかなかない。どうしても付けたい」。ラグビーで手に入れた強靱(きょうじん)な肉体で中嶋を粉砕する。【松熊洋介】