横綱白鵬(32=宮城野)が、2場所連続39度目の優勝を決めた。1差に迫っていた平幕碧山が勝ったため、結びの一番で横綱日馬富士に敗れれば優勝決定戦にもつれ込むところだったが、1分9秒5の長い相撲を制して賜杯を手にした。昨年名古屋場所で負傷した右足親指を手術し、翌秋場所を全休。先場所で1年ぶり優勝を果たし、今場所は13日目に通算勝利数歴代1位を達成した。その裏には「断食パワー」があった。秋場所は9月10日に東京・両国国技館で始まる。

 2場所連続の優勝インタビューで、ちゃめっ気たっぷりに答えた。「名古屋のみなさん。サン・キュー」。自身が持つ最多優勝記録を更新する39度目の優勝。「39」と書かれたうちわを持ったファンを見つけてひらめいた。「天才だね」。自画自賛するほど、気持ちは舞い上がっていた。

 勝てば無条件で優勝が決まる一番。左に動いて左上手を取り、すかさず右を差した。盤石の体勢。ただ「投げが強いからね。よく見ていた」と互いに四つに組んだまま、土俵中央で動きが止まった。先に仕掛けたのは日馬富士。強引な寄りをこらえて、体勢を入れ替えて寄り倒した。

 苦しい1年だった。昨年名古屋場所の勢戦で、右足親指を負傷して手術に追い込まれ、翌秋場所を全休。復帰した去年の九州場所は11勝止まりで、春場所は右足親指を再び痛めて途中休場した。1年間、賜杯から遠ざかったのは自身最長ブランク。悪夢のきっかけとなった名古屋で、完全復活とも言える2場所連続優勝。その裏には、昨年秋場所を全休した間に行った断食の存在があった。

 サポートしたのは、杏林予防医学研究所の山田豊文所長だ。12年から白鵬の食生活を含めたコンディショニングづくりを支えている。断食の効果を「我々が物を食べていない時に細胞が体内の不要な物を食べる。だから若返る」と説いた。山田氏の断食法は、準備期間を含め約1カ月を要する。秋場所の全休で1カ月が生まれた白鵬には、うってつけのタイミングだった。

 断食期の3日間で口にできたのは水と、酵素の働きをサポートするマグネシウム入りのドリンクのみだった。そんな断食を終えた横綱について、山田氏は「明らかに体も心も若返ってきている。普通なら晩年なのに」と驚き、白鵬自身も先場所の優勝後に「検査したら血管年齢が25歳だった」と明かしたように、肉体の復活を感じ取っていた。

 前人未到の優勝40回に王手をかけ、通算勝利数も歴代1位になった。「15日間大きなケガなく全うできた。大満足ですよ」とやり切った表情。そして「とりあえずゆっくり休みたい」。また1つ歴史に名を刻んだ大横綱。来場所に向けて、今は羽を休める。【佐々木隆史】

 八角理事長(元横綱北勝海) 決して慌てない白鵬に対し、日馬富士はしがみつくのがやっとだった。今場所の白鵬は落ち着いて気力も充実していた。勝負どころで集中力を出して勝ち方も知っている。常に先手先手を取っていた。(大台の優勝40回は)今年中にと思っているだろう。