西前頭3枚目北勝富士(25=八角)が、初顔合わせの横綱稀勢の里から金星を奪った。頭をつけ、横綱得意の左からの攻めを封じ、こん身の寄り切り。名古屋場所の鶴竜、秋場所の日馬富士に続く3場所連続3個目の金星だ。幼少時から憧れた「強い人」を破って1敗キープ。今日19日の中日は、ただ1人全勝キープの横綱白鵬が相手。全横綱からの金星を狙う。

 北勝富士が稀勢の里の胸に頭をつけ、離れない。横綱の左差しを懸命に封じ、下から全力で押し続けた。「重かったッス。何回もダメだと思って心が折れそうになって、苦しくて。でも最後に横綱が慌ててくれて…」。寄り切りで手にした金星を、支度部屋で振り返る時も息は上がったままだった。

 「僕は昔から弱かったから、研究を大事にしてきた」。幼少時は親が撮ったビデオを見た。テレビの大相撲中継もいろんな力士を見て、学んだ。「強い人。連勝中の白鵬関に勝ったり、立ちはだかって、肝心なところで場所を面白くしてくれる人」が稀勢の里だった。「どっしり構える、横綱相撲。後の先です」と、映像で教えてもらった。

 前夜は横綱の今場所6番を全部見てイメージを高めた。ただし時間は10分ほど。「あとは切り替えて」。大好きなお笑いコンビ、07年M-1王者サンドウィッチマンのネタをスマホ動画で見て、リフレッシュした。

 名古屋場所で鶴竜を押し出し、秋場所で日馬富士を寄り切り、3場所連続でしかも違う横綱から金星を手にした。「前の2番と違って(力を)出し切ったし、内容も覚えてる。3回目だし(うれし)涙はいいです」。もう偶然じゃない。必然だ。その証拠に7日目を終えての1敗キープは自己最高ペース。今日の中日は白鵬戦。初対戦の名古屋場所では送り出しで屈した。4横綱総なめの4個目金星になれば、北勝富士はV戦線でもトップに並ぶ。【加藤裕一】

 ◆北勝富士大輝(ほくとふじ・だいき)1992年(平4)7月15日生まれ、埼玉・所沢市出身。本名は中村大輝。小4から相撲を始め埼玉栄高3年で高校横綱、日体大2年で学生横綱。八角部屋から15年春場所で初土俵。16年九州場所の新入幕を機にしこ名を大輝から改名。師匠の八角親方(元横綱北勝海)が現役時代の師匠、北の富士勝昭氏(元横綱)にちなむ。家族は両親と兄、姉。185センチ、160キロ。