東京オリンピック(五輪)が閉幕した。相撲は五輪競技ではないが、今大会は相撲ファンにとって目に留まる場面がいくつかあった。

<ボクシング>

両国国技館は、ボクシング会場として利用された。いつもは土俵がある位置にリングが設置され、たまり席はなし。マス席の一部は、カメラマン席に使われた。優勝額はそのまま掲額されていたが、「毎日新聞社」の文字はマスキングされていた。

海外の記者には興味深く映ったようで、AP通信のフィリップ・クラウザー記者はツイッターで、優勝額やマス席の写真をアップし「国技館の素晴らしいエキゾチックな細部。下のセクションでは、靴を脱がないといけない」などとつぶやいていた。

ボクシングの競技前には、場内で幕内格呼び出しの利樹之丞(高砂)が寄せ太鼓をたたき、十両格呼び出しの啓輔(芝田山)が拍子木を打った。大会組織委員会からの要請に、日本相撲協会が応じて実現したという。高砂部屋関係者によると「テレビを見て初めて知りました。あとで聞いたら、事前には絶対に言ってはいけないと言われていたそうです」。利樹之丞も啓輔も事前にネタバレすることなく、任務をしっかりこなした。

<馬術>

馬術の障害飛越では、障害物の脇に力士のオブジェが置かれていた。ほかにもダルマや和太鼓も設置されるなど、日本らしさが演出されていた。

<レスリング>

相撲界と縁のある選手の活躍もあった。レスリング女子50キロ級金メダルの須崎優衣選手は、父が相撲好きで何度も相撲観戦に訪れているという。父との縁で須崎選手を幼少期から知る雷親方(元小結垣添)は「見ていて感動しました。部屋の若い衆の相撲を見ている時のようにドキドキしました。勝った時はうれしかったですね」と喜びを口にした。

<聖火リレー>

横綱白鵬はかねて開会式での土俵入りを期待していたが、これは実現しなかった。ただし、組織委関係者によると、国立競技場内を走る聖火ランナーの最終走者グループに含まれる可能性があったという。白鵬は7月の名古屋場所で復活優勝を果たしたが、それまでは6場所連続休場していた。力士は基本的に休場中は、イベント出演などはNG。そういう事情もあり、候補の1人ではあったものの、事前の計画に盛り込めなかったようだ。

<秋場所>

9月の秋場所(9月12日初日、両国国技館)のチケット一般販売は8月14日から始まった。ボクシング仕様になっていた国技館は今後、秋場所に向けた準備に入る。東京五輪期間にかぶらないように行われた7月の名古屋場所は、例年より前倒しで開催された。そのため、秋場所までは中55日と例年より長い。思うような出稽古はできず、新型コロナウイルスの影響はまだ残っている。力士たちは、所属する部屋でしっかり稽古できたかどうか。“長い8月”を辛抱できたかどうかが、秋場所の結果に表れてくるかもしれない。【佐々木一郎】