幕内最年長、37歳の西前頭6枚目・玉鷲(片男波)が大関経験者の高安を押し出し、2日目から6連勝で1敗を守った。19年初場所で優勝した実力者で、初めて番付に載った04年春場所から1度も休場がない鉄人が主役候補に浮上してきた。7戦全勝は横綱照ノ富士、大関貴景勝の2人だけとなった。

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若々しく、荒々しい相撲だった。玉鷲が大関経験者の高安を寄せ付けない。左おっつけからの鋭い立ち合いで相手に何もさせずに押し出した。初日こそ黒星も、2日目から6連勝で1敗をキープ。幕内優勝経験もある実力は「本当によかった。自分の相撲を取りきった」と話し、NHKの取材で年齢を問われると「秘密です」とおちゃめに言った。

もちろん年齢は公表されており、今月16日に誕生日を迎えた37歳は幕内最年長。そんな年齢を感じさせない。何より休んでいない実績が、証明している。初めて番付に載った04年春場所から、18年間も休場はない。鉄人が連勝を伸ばして主役候補に浮上してきた。

2年ぶりの九州場所。初優勝を飾った19年初場所後、九州場所での宿舎を構える福岡・朝倉市の親善大使となった。朝倉市を「第2の故郷」と言い、「いつも応援してくれる人がいて元気をいただいている」と話す。新型コロナウイルス感染症予防の観点から、現状は交流できていない。「とにかく会いたいですね」という人の温かみにも支えられている。

横綱、大関が走り、平幕は全勝が消えた。上位安泰の場所なのか。そこに波乱を吹き込むのがベテランか。「(優勝争いは)全く考えていない。自分の相撲を取るだけですね」。この乱れない平常心が、不気味になってくる。【実藤健一】