関東王者の高校生が“稀勢の里2世”になる。大相撲の荒磯部屋と茨城・東洋大牛久高は8日、同所で同校相撲部3年の花房海(18)の入門会見を行った。今年6月に関東大会を制した花房は、同市出身の荒磯親方(元横綱稀勢の里)の熱烈スカウトもあって入門を決意した。得意の左右は逆だが、師匠の現役時代と同じくおっつけが持ち味。来年1月の初場所(9日初日、東京・両国国技館)で初土俵を踏み、まずは部屋の関取第1号を目指す。

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8月に独立した荒磯親方の部屋に、関東王者の有望株が加わることになった。会見にはテレビカメラ5台、30人超の報道陣が集結。18歳の花房は「目標は関取になること。今まで支えてくださった方々に恩返しがしたい」と、緊張の面持ちで意気込んだ。会見に同席した師匠は「これだけの報道陣が来たらプレッシャーは半端ないと思うけど」とフォローしつつ「大関や横綱に昇進したらこんなもんじゃないから」とニヤリ。期待は大きく膨らんでいる。

19年初場所の引退後、地元である同校相撲部の稽古に何度か訪れて指導したことが縁となった。174センチ、128キロと決して大柄ではない花房だが、荒磯親方は「馬力の良さが非常にいい。武双山関(元大関、現藤島親方)のような馬力を感じる」と評価する。来年5月には茨城県阿見町に部屋を新設。相撲を通じた地元振興を見据えており、同市との関係性の深い花房の入門で“町おこし”も加速しそうだ。

荒磯親方とは3つの共通点がある。一つはおっつけ。左の強烈なおっつけを武器としていた同親方と同じく、花房も右おっつけが得意。「(荒磯親方が)現役の時は左のおっつけが強くて、稀勢の里の相撲を見ていて勉強していた」と花房。おっつけの角度など、荒磯親方からすでに“英才教育”を受けているという。

身体的特徴でも通ずるものがある。「私との共通点は足が長いこと。足の長さは短所だと思っていたけど、この足の長さを生かして横綱まで駆け上がった」と荒磯親方。何より共通するのは“相撲愛”。「相撲が好きじゃないときつい稽古は耐えられない。自分も相撲が好きで入ったが、同じものを感じる」と熱く語った。「私も親方として1年生。一緒になって成長したい」。次の「稀勢の里」を育てていく。【佐藤礼征】

◆花房海(はなふさ・かい)。2003年4月15日、東京・調布市生まれ。6歳でわんぱく相撲大会に出場したことをきっかけに相撲を始めた。東京・神代中卒業後は東洋大牛久高に相撲留学。高校では1年時に国体で団体メンバーとして5位入賞。3年時に関東高校相撲大会で、同校創部以来初となる個人無差別級優勝。全国高校総体は同校から新型コロナウイルス感染者が出たため、出場を辞退した。174センチ、128キロ。得意は押し、おっつけ、出し投げ。

 

稀勢の里二世として期待される花房海には最高の相撲環境が与えられる。荒磯部屋は来年5月に茨城県阿見町に完成する。稽古場は、通常1つの土俵を2つ作る予定。郊外で会場の両国国技館から1時間以上かかるが、稽古の充実を図るため、用地の確保を優先した形だ。

荒磯親方は今年3月に早大大学院スポーツ科学研究科の修士課程1年生を修了し、「新しい相撲部屋経営の在り方」を研究してきた。2つの土俵を作ったのは、待ち時間を減らし、稽古量を増やす狙いなどがある。稽古を振り返りやすいように複数のビデオカメラや、親方や弟子が話し合えるミーティングルームを設置する。

稽古の充実だけでなく、観光客用に部屋オリジナルグッズなどを置いたお土産コーナーを設ける案もあり、地元との交流も積極的に行う。現在、茨城の部屋は式秀部屋(龍ケ崎市)もあるが、荒磯部屋が両国国技館からは最も遠い部屋になる。