[ 2014年5月19日7時39分

 紙面から ]別メニューで軽い調整を行った酒井宏(撮影・狩俣裕三)

 親友の分まで右サイドを駆け上がる。W杯ブラジル大会の日本代表DF酒井宏樹(24=ハノーバー)が18日、都内で行われた海外組の自主トレに参加。柏の下部組織からの同期で、今回落選したFW工藤壮人(24)から「お前だけ応援してるわ」と本音のメールが届いたことを明かし、無念さを胸に戦う覚悟を示した。

 右の膝蓋腱(しつがいけん)炎症でリハビリ中の酒井宏は、ほかの8人と別メニューで走り込んだ後、親友への思いを語った。「工藤の分まで戦う覚悟はあるけど、背負うとまでは言えない」。軽々と口にしないのは、本音を知っているから。12日のメンバー発表後、こんなメールが届いた。

 「お前だけは応援してるわ」。

 そう明かした酒井宏は「あっ」と口を開き、顔を覆った。「言っちゃいけない話でした」と断ったが、続けた。「相当、悔しい思いをしたはず」。友の抑え切れない本心に接し「あらためて、頑張らなければいけないと思った」と言った。

 柏U-15に入った中学1年から酒井宏がドイツに渡ったプロ4年目まで10シーズンを過ごした。中高の苦楽を分かち、ともにトップへ昇格した後の11年5月14日新潟戦では工藤のJ1初得点をアシスト。昨年11月2日のナビスコ杯決勝では工藤が決勝点を奪い優勝。その映像をドイツで確認、祝福メッセージを送った。翌3日、今度は自分がブレーメン戦で移籍初ゴールを決めた。すぐ工藤から祝福のメールが届いた。常に連絡を取り合う仲だった。それでも今回の発表後は「ちゅうちょしました」。悩んだ末にメールで決意を伝えると、すぐ先の返信があった。

 帰国後、柏の練習場に顔を出したが、夕方だったため午前練習の工藤とは再会できなかった。2人とも選出されれば、日本初の中高同期の同時出場だった。「自分は自分で精いっぱい頑張らないと。まずは足の痛みをゼロにしたい」と躍動の準備を進める。【木下淳】