[ 2014年6月26日8時21分

 紙面から ]後半ロスタイム、決勝ゴールを決めたサマラスは、ハートを作って駆ける(AP)<W杯:ギリシャ2-1コートジボワール>◇1次リーグC組◇24日◇フォルタレザ

 奇跡は日本ではなく、ギリシャに起こった。コートジボワール戦の後半ロスタイムにFWヨルギオス・サマラス(29=セルティック)がPKを決めて、2-1で勝利。C組最下位から2位に入り、初の16強入りを決めた。決勝トーナメント(T)1回戦はD組1位のコスタリカと対戦する。

 5万9095人の視線を浴びても、まるで動じなかった。1-1の後半ロスタイム。ギリシャのサマラスはPKを獲得すると、自らペナルティースポットに立った。「何度も練習してきた。1人の目の前で蹴ろうが、何万人が入るスタジアムだろうが、変わりはない」。落ち着いて右足で蹴り込むと、次のプレーで試合終了の笛がなった。

 引き分け以下なら1次リーグ敗退。あと数秒で今大会が終わるという瀬戸際で、勝負強く決勝T進出を決めた。「選手たちには『今日で終わりという試合じゃない。明日もあるんだ』と言い聞かせた」とサントス監督。そんな奇跡の勝利を呼び寄せたのは、ギリシャ神話の神々ではなく、派手さはないが勝ちに徹するプレースタイルだった。

 守ってカウンターという堅守速攻型のギリシャは、初戦のコロンビア戦で相手ペナルティーエリア内でのボール保持率が7%。2戦目の日本戦が5%。喉から手が出るほど点が欲しいはずのコートジボワール戦も、決して攻撃偏重にならず、相手エリア内での保持率は3%にとどまった。一方で、ボールを持った相手への厳しいプレスや、こぼれ球への反応を徹底。サマラスのPKも、相手DFのクリアを拾ったところから生まれた。

 ギリシャ国内は経済破綻により不安定な状態が続く。そんな中、代表チームの勝利は数少ない明るい話題の1つだ。決勝トーナメント1回戦では「死のD組」を首位で勝ち抜いたコスタリカと顔を合わせるが「母国の人々を喜ばせたい。僕たちは大きなチームなんだ」とサマラス。「ノックアウトステージでは、何でも起こりうる。相手の強みと弱みを分析し、戦えるように準備したい」と、国民を勇気づける白星を積み重ねることを誓った。