描かれた異色教師が反響を呼んだ作家重松清氏(45)の短編小説「青い鳥」が映画化され、阿部寛(44)が主演を務めることが27日、分かった。心の傷や孤独感を抱える生徒に向き合う、中学校非常勤講師の姿を描く感動作。個性的な役柄で人気を獲得した阿部が、静かにメッセージを伝える教師役という新境地に挑む。いじめや学級崩壊、教員採用汚職など教育現場の問題にスポットがあたる中、教師のあり方に一石を投じる作品になりそうだ。11月下旬公開。

 小説「青い鳥」は、いじめや家庭崩壊などを多くの小説で題材にしてきた重松氏が、異色教師を主人公に、06年春から「小説新潮」で随時発表した短編シリーズの1作。8作を集めて昨年7月に出版した単行本の表題作でもある。発表後は「こんな先生がいてくれたら」「涙が止まらなかった」などの声が数多く寄せられたという。

 主人公は吃音(きつおん)を持つ国語教師。朗読や会話がままならないため、冷笑する生徒もいる。担当クラスには赴任前、いじめられ自殺を図った男子生徒がいた。生徒は転校し、いじめに加担した生徒たちも平静を装うが、事件を忘れ去ろうとする生徒たちに静かに向かい合っていく。

 典型的な熱血教師と一線を画す。強い意志は秘めつつ、言動はあくまで静かで穏やかだ。アクの強い個性的な役柄の印象が強い阿部の起用について、小滝祥平プロデューサーは「目の奥に誰でも入ってきていいよというコタツのような温かさを感じる」。このほど撮影を終え「今までにない演技を見せてくれた」と手応えを感じている。

 阿部も作品のテーマに心打たれながら撮影現場に立った。「今、子供たちは心の傷を体よく覆い隠し、さらすことができなくなったのでは。私たち大人が何をしてやれるかずっと考えていました」。

 教育現場の社会問題化は進む一方だ。政治家や官僚、評論家らが論じる教育改革も決め手に欠いた印象が強い。阿部は「(演じた教師は)教え諭すのではなく、手がかりになるヒントを生徒に与えるだけ。あとは気付くのを待つ。この映画もそういうものになればと思っています」。

 小滝プロデューサーは生徒役1200人以上の選考面接でいじめの現実を知り、学校関係者への綿密な取材で根深さと実態に衝撃を受けたという。「子供たちの未来に責任がある大人としてやるべきことがある。そんな思いで取り組んだ作品です」。