美輪明宏(84)の入院が長引いている。当初は2週間ほどの予定だったが、高齢とあって、大事をとって療養に努めることになった。そのため、コンサート「美輪明宏の世界 ~愛の話とシャンソンと」の全国公演も中止が決まった。

美輪は11日に軽い脳梗塞のため入院し、12日以降の東京公演は中止となったが、実は17日に見に行く予定だった。関係者によると、コンサートは途中に休憩をはさんで、ピアフの「愛する権利」からアンコールの「愛の賛歌」まで11曲を歌い、曲と曲の間にシャンソンと愛などについてトークを繰り広げた。会場に笑いがあふれ、2時間を超えたという。

コンサート直前、美輪はシャンソンを歌うことの大変さを明かしている。「1曲に1人の人間の愛のドラマが描かれていることが多いのですが、その人には相手がいるわけだから、2人分の芝居を1曲に込めなくてはいけない。コンサートにいらした方は『映画を何本も見たような感覚です』と仰るけど、とんでもない。お芝居を何本も立て続けに上演しているほど、気力も体力も必要になります。1曲1曲が真剣勝負。幕が下りた時の達成感たるや、責務を果たせたと倒れ込むように楽屋へ戻ります」。

9月7日に幕を開けた後も、休演日を入れたり、美輪の体調に万全の注意を注いでいたが、公演中止の事態になった。美輪は「長年、音域も声量も変わらない」と言いつつも、「何てことない顔をして歌ってるけれど、登場人物の精神状態から複雑な事情から情景まで、何から何までを自分の体に流し込んで、肉体と心に指令を送って、力をキープしながら歌い上げる。もう84歳ですからね。足腰も弱っているし、今までもったのが不思議なくらい。ひょっとしたら、今年のコンサートが最後になるかもしれない」と、弱気な発言もしていた。

美輪は、現代に生きる人たち、世界を救える言葉として、「ルンルン」という懐かしい言葉の復活を提唱していた。「会話の途中でも最後にでも、『ルンルン』を言えばいい。『お帰りなさい ルンルン』『ご機嫌よう ルンルン』とか。疲れた心が楽になって、言った方も、言われた方も、気持ちが明るくなると思いませんか」と。復帰時期は未定だが、美輪は長く慢性気管支炎の持病を持ち、50代の時には大病のため医師から「3カ月の命かもしれない」と告げられたこともあったが、奇跡的に回復し舞台に戻ってきた。今回も不死鳥のように舞台に帰ってくるだろう。今ごろ、病床で「早く戻るからね、ルンルン」と言っているかもしれない。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)