市川猿之助容疑者(47)の逮捕を受けて、「猿之助」の名跡の行方が取りざたされているけれど、すぐに結論に出る話ではないと思います。大前提として、猿之助容疑者が「猿之助」の名跡を返上するなどした後に、その行方をめぐる動きが始まってくるでしょう。
ですから、これから書くことは仮定の話になります。今後、猿之助容疑者が名跡を返上しても、すぐに誰かが襲名することにはならないでしょう。「猿之助」は初代から2代目、2代目から3代目(現猿翁)、そして3代目から4代目に生前継承されており、空白期間がありません。ただ、こういう例は珍しく、多くの名跡には誰も継いでいない空白期間がありました。市川團十郎は先代の12代目の没後、10年の空白を経て、昨年11月に13代目が誕生しました。團十郎と並ぶ大名跡の尾上菊五郎も、6代目が亡くなってから、24年後の73年に7代目を襲名して、現在に至っています。
誰しもが「猿之助」にふさわしいと思う俳優が出てくるタイミングを待つのが賢明でしょう。その最有力が猿翁の孫で、香川照之こと市川中車の長男市川團子(19)であることは間違いないでしょう。團子が若すぎることから、いくつかの報道では「澤瀉屋(おもだかや)」のリーダー候補として何人かの名前が挙がっていますが、実現する可能性はほとんどないと思います。
團子は市川染五郎と同世代の若手として注目されていましたが、今回の代役劇などで一躍脚光を浴びる形になりました。本来ならじっくりと時間をかけて育てる予定だったはずですが、これからはより重要な役を振りあてられ、注目度も高くなっていくでしょう。時には厳しい目が注がれる場面も出てくるでしょうが、そういう「試練」を乗り越えた先に、「5代目猿之助」が見えてくると思います。
そして、「猿之助」をめぐる緊急事態にあって、「澤瀉屋」の総帥でもある猿翁の動向がまったく報じられていないのも気になります。長く病床にあって、ここ数年は公の場に姿を見せていません。猿翁が元気だったら、どうしただろうか。そんな思いが頭の中を駆け巡っています。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)




