地球沸騰化がキーワードになった夏に、この作品が公開されることに因縁めいたものを感じる。
「ドラゴンボール」の鳥山明さんが00年にコミックス1冊分に凝縮させた冒険ファンタジーのアニメ化だ。
舞台となる砂漠の世界では人間と魔物が共存している。正義感の強い保安官ラオは、水源を独占する国王の圧政に腹を立て、ワルぶっていても心優しい悪魔の王子ベルゼブブとそのお目付け役のシーフとともに「幻の泉」を探す旅に出る。
全身ピンクのベルゼブブを始め、いかつい顔に不思議な優しさがにじみ出ている。日差しや砂漠のジリジリ感には、まるで横嶋俊久監督以下スタッフの気合がこもっているようで、頭でっかちのキャラクターや乗り物の車長を圧縮した鳥山ワールドにいつの間にか取り込まれる。
原作はアシスタントなしで描き切ったと聞いたからかもしれないが、キャラそれぞれがより生き生きと感じられ、ワルの中に潜む良心や権力を握った者の危うさなど、一筋縄ではいかない世の中のあれこれがギュッと詰め込まれている。
爽快な幕切れまでは密度は濃い。喉が渇いた。【相原斎】
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