友だちなし。彼女なし。天然パーマがトレードマークでカレーが大好物。菅田将暉が演じる主人公の大学生、久能整(ととのう)は少し面倒くさいけど、鋭敏な言葉で人の心の闇を解き明かし、難事件を解決していく。
田村由美氏の同名漫画を原作とし、22年1月期にフジテレビ系で放送され、大きな話題を呼んだ連続ドラマの映画化だ。原作ファンが「広島編」と呼ぶ待望のエピソードを描く。広島で大好きな印象派展を堪能した整が、代々遺産を巡る争いで死者さえ出るといういわく付きの名家・狩集家(かりあつまりけ)の遺産騒動に巻き込まれていく。
たかが映画と言う勿れ。「僕は常々思うんですが…」。整が切り込む疑問や質問は、日々の生活の中で一瞬、「んっ」と思っても、「まぁ、いいか」とスルーし、忘れ去られそうになること。整はそれを心にとどめ、相手と対話し、共感を得てから深層心理にそっと触れてくる。「人は弱くて壊れやすい。それが当たり前」。菅田の俳優としての技量は高く、抑揚を抑えたセリフ回しは、じんわり心にしみる。松下洸平、町田啓太らが作品の強度を上げている。後味はいい。【松浦隆司】
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