路上ライブ1000回達成で知られるシンガー・ソングライター、川嶋あいさん(31)がアジア、アフリカの途上国で学校を建設する活動に取り組んでいます。もうすぐ9校目の学校がラオスに完成します。目標は100校。先日、大阪市内で行われた里親制度について考えるシンポジウムに出席した川嶋さんに支援の思いを聞く機会がありました。

 川嶋さんが途上国支援を考え始めたきっけは中学生のときでした。「テレビのニュースで貧困に苦しむアフリカの子どもたちの映像を見て衝撃を受けた」。アマチュア時代から音楽活動と並行してボランティア活動を続け、プロになってからは音楽活動の収益の一部を日本の市民団体を通じ、途上国の学校建設プロジェクトに寄付してきました。

 05年に西アフリカのブルキナファソ、カンボジア、東ティモールと、これまで8校の学校を建設してきました。

 「劣悪な環境の中、5歳未満で亡くなってしまう子どもがたくさんいる。遠く離れていても、困っている人を見過ごしたりできない」

 貧しく苦しい状況にある人々を少しで助けたい。そんな強い思いはどこからくるのでしょうか。川嶋さんは里親のもとで育ちました。「やっぱり育ててもらった父と母の影響を受けているのかもしれない。本当に強い愛情で育ててもらった。今度は私の番。苦しんだり、寂しがっている子どもたちをどうやったら支援することができるか。そう思い始めたのがきっかけ」

 いまも実の父を知らない。実母は3歳の時に亡くなり、3歳の頃、児童養護施設から川嶋家に里子として迎えられ、その後、養子に。10歳で父が他界。中学生の時、偶然見つけた書類で、両親と血縁がないことを知りました。

 15歳で歌手を目指して上京。だが、所属事務所に解雇され、渋谷の路上で歌い始めました。「路上ライブ1000回」を約束した相手は母でした。人気テレビ番組「あいのり」の主題歌でデビューが決まる1カ月前、歌手になるという夢を支え続けてくれた母が他界。16歳のときでした。

 これまで学校を建設したインド、カンボジアなどを訪れました。

 「人身売買を受けてしまった子、自宅から学校までの距離が遠くて通えない子、学校に行くのだったら労働してほしいと思っている家庭も多い。そういう子どもたちへの教育を提供したい。建てられそうな地域を探して、これからもずっと機能していくように、1校1校建てていきたい」

 貧困や虐待などさまざまな事情で実の親と暮らせない子どもを預かり、家族の一員として育んでいくのが「里親制度」。川嶋さんは海外の子どもたちの「里親」になろうとしているのかもしれません。

 伝説の路上ライブ1000回達成からまもなく13年を迎えます。

 「路上ライブ1000回ではないけど、100校を目標にしたい」 

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)