“魔性の女”と呼ばれ続けてきた女優・高岡早紀(48)。そんな世間に問いかけるかのように、5月20日に初のエッセー「魔性ですか?」(KADOKAWA)を出版した。一方で18日に封切られた主演映画「リカ~自称28歳の純愛モンスター」(松木創監督)では、タイトル通りのモンスター的な女性を演じている。果たして魔性なのか、否か…。本人に確かめてみた。

★モンスターつながり

19年放送の深夜ドラマが「みじんも思っていなかった」という映画化に発展した。演じる主人公は純愛を貫こうとするあまり、理想の男性を、手段を選ばず追い求める。「ハードルが高く、好んでやりたくなかった」サイコパスな役だったが大きな反響を呼んだ。

「ここまで究極な役も、なかなかない。(男性が)ただただ愛する、欲しいものになっていて…恐ろしいですよね。ただ、リカは真っすぐ、その人だけを思う気持ちは純愛だと信じている。共通点を見いだす女性は多いんじゃないかなと。私だけを見て、愛して欲しいという気持ちや、その人の持ち物をお守りにしたいという気持ちもあると思う。好きな先輩の制服の第2ボタンとか、欲しがったりしたじゃないですか? みんな、そういう道も通っているだろうし」

愛する男性の目鼻を外科手術で切除するなど一見、サイコスリラーだが「スパイダーマン」か? と見まごうばかりに宙を飛ぶシーンまで飛び出し「笑える」という声もある。幾つものジャンルが融合した唯一無二の「リカ」というジャンルだと語る。

「究極のエンターテインメントを目指していてラブ、ホラー、サスペンス要素もある。ワイヤアクションは、飛び上がるシーンからヒューッと降りてくるところまで5、6メートル上まで飛んだ。2、3メートル上がれば、あとはスタントの人にやってもらう予定だったんですけど、思いのほか上手に飛べたので。見ていただけるなら、笑える部分がフィーチャーされてもいいかなと思うけど…ちゃんとしたストーリーがある。面白いだけで何も残らないというんじゃ、私は納得できない」

“魔性の女”という形容詞がつくに至った過去の役との因果をリカに感じる。

「面白く、皆さんの印象に残るような作品を何年かごとにやらせていただいた。94年の『忠臣蔵外伝 四谷怪談』で演じたお岩さんもモンスターで、13年には『モンスター』という主演映画もあり、今回も…。“モンスターつながり”なんだと認識したり、結局はそう(魔性の女)かと自分で納得していくしかない。ただ、面白い役をいただけることは、女優として本当に幸せ。だからこそ、続けるし結局、女優って楽しい」

「忠臣蔵外伝 四谷怪談」の深作欣二監督に言われた言葉は女優業の宝だ。

「『男の俺に女性の気持ちを聞かれても分かんないよ。お前さんが一番よく知っているはずだ』という言葉は、今でも私に自信を与えてくれて、役を演じる時の助けになる。いつでも、いつまでも『だって、私、女だもん!』という自信を持って役を演じたい」

★裸見せてはいけない

一方、著書では全208ページにわたり本音をつづった。96年に23歳で結婚し98年に長男、00年に次男を出産も04年に離婚したこと、37歳の時、再婚を考えた男性がおり妊娠したものの、結婚しない道を選び38歳で長女を産んだことも書いた。

「面白く読んでいただけたらいいなぁと思ったエッセー集であって、決して暴露本を書こうと思ったわけではない。もちろん、本当はもっといろいろな感情がありますけど全て本当の気持ちをサラッとですけどつづった」

63本あるエッセーの中で、子育てや母親である自分をテーマにした章は25本に及ぶ。“魔性”とは正反対の、1人の母親の姿が克明に浮かび上がる。

「ちゃんと朝6時には起きて、すぐにお弁当を作ったり、朝ご飯を作ったり、散歩に行ったり。普通の女でしょう! 魔性ではない…本当に、そういう風に生きていますから」

息子2人は、10代から米国の学校で学び現地で就職、どの男性よりも高岡を理解しているとつづった。

「今後、どんな人が現れようが、彼らの方が私のことをよく知っている。今、どの言葉をかけるか、逆に無言でいる方が良いか…。ちゃんと“今じゃないポイント”とか分かってくれている。大事じゃないですか? 彼らが結婚したりとか、パートナーが出来たりとかしたら、もしかしたら私も寂しくなって…ね」

起き抜けでひどい顔を息子に見せるともつづったが、守っていることもある。

「家の中で、気を使った生活はしていませんよ。汚い顔を見せるなんて全然、どうでも良くて…。でも、息子も、もう大人。お互いに、もう裸は見せちゃいけない。それは、ちょっと気を付けなきゃなぁと思う。よく言うけれど、お風呂上がりは裸で歩いちゃいけない、みんな服を着ないといけないよね」

★再婚ない…何のため

恋愛の必要性は今、感じていないともつづった。

「本のオファーをもらったのは昨年。書いたのは今年なので、ずっとということじゃなく、書いている時は、そう思ったということで、それは、それで真実。別に恋愛がなくても生きられますから。誰かに頼らなくても生きられちゃうから。もちろん、恋愛と結婚は違うかも知れないんですけど結局、1人でいる。だから、別に恋愛しなくても大丈夫ということ」

一方で、パートナーになることは想像できないものの、いい空気が流れる微妙な関係性の「オトコトモダチ」の存在も明かした。再婚は考えているのか?

「結婚…う~ん、全くないですね。結局、何のために結婚するのか? という意味を離婚してから、ずっと見いだせていないので。自分が楽しく生きていける、生活していける、いろいろなものが、もうそろってしまっているから(恋愛が)母親業と女優業の“すきま”という表現になってきたりもするんですけど。誰かと結婚するということは今、自分が好きなものとかを少しずつ手放さなければいけない可能性も、あるじゃないですか? そうなってくると、そっちが幸せか? と思ってしまって…」

高岡佐紀子という1人の人間として女優・高岡早紀から刺激を受けている。今後の人生をどう歩むのか?

「高岡早紀という女優を俯瞰(ふかん)で見て、いつまでも楽しそうだなと思える存在で、いさせてあげられたらいいなと。どんな方向へでも行きたい。楽しい出会いが、今後もいっぱいあったらいいなと思う。あとは…だんだん年齢も重ねてきた上で言うと、上手にこの年齢と付き合っていかなきゃいけない。自分の年齢と向き合っていくことは課題だと思います」【村上幸将】

▼高岡と濃厚なキスシーンを演じた市原隼人(34)

理性、協調性とか全てを外して、衝動的に自分の感情を訴えかけるのがリカの魅力の1つ。なぜ、こういう人格形成になったんだろうと僕は深く考えてしまった。(演じた)奥山の境遇を照らし合わせて…必然的にリカに引かれちゃった。(試写を見て)ジェットコースターに乗せられ、極限まで恐怖を感じて振り落とされた感じがした。このジャンルは何なんだろう? どこにも当てはまらない…リカというジャンルなんだと。

◆高岡早紀(たかおか・さき)

本名高岡佐紀子。1972年(昭47)12月3日、神奈川県藤沢市生まれ。7歳でクラシックバレエを始め、モデルを経て14歳で「第3回シンデレラ・コンテスト」に優勝。革靴「マドラス」のCMに出演して芸能界入り。88年にデビュー曲「真夜中のサブリナ」リリース。90年映画「バタアシ金魚」主演。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞。放送中のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で朝ドラ初出演。

◆「リカ~自称28歳の純愛モンスター」

山中で発見された死体は3年前に逃走犯の雨宮リカ(高岡)に拉致され、行方不明になった本間隆雄のものだった。警視庁捜査1課の奥山次郎(市原)はマッチングアプリで探し出したリカに、のめり込んでいく。

(2021年6月27日本紙掲載)