星組トップ紅(くれない)ゆずるは10、11月に劇団3度目の台湾公演「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」「Killer Rouge/星秀☆煌紅」に主演し、台湾へセンターとして凱旋(がいせん)する。芝居では、台湾の伝統的な人形演劇を原作に、悪人らをこらしめて楽しむ謎多き主人公にふんする。大阪、東京での先行公演を終え、台北で10月20~28日、高雄で11月2日~5日に上演予定。

13年、台湾公演初回時の星組メンバー。15年の花組を経て劇団3回目の台湾上陸。紅自身は5年ぶり2度目。今度は、星組をけん引してセンターに立つ。

「いやもう、すごく行きたかったんです。私、海外、基本的に苦手なんですけど、台湾は、あの後、写真集撮影でも行った。人々はあったかくて、日本人とは容姿も似ていて、食べ物も中華料理とは違う味で、芸術も食事も共通点が多い」

芝居は、シナリオライター虚淵玄氏のオリジナルによる、台湾の人気人形演劇「布袋劇」が原作。悪や欲に満ちた人をこらしめて楽しむ謎多き主人公が、魔界も登場する異世界で繰り広げる武侠ファンタジーだ。

「宝塚で(主人公が)極悪非道すぎると、ファンの人がついてこられない。ヒーローなのか、悪役なのか、どっち? って、謎めいた存在でいたい。悪党の鼻をへし折ってやりたい-それが彼の楽しみで、趣味」

宝塚王道の「ヒーロー」ではない。演出の小柳奈穂子氏から「EXILE TRIBE」のメンバーが出演する「HiGH&LOW」シリーズの世界観と近いと説明された。実際に大阪、東京でも演じてきた。

「なぜ? って、深く考えない。なんで鉄パイプ持っているの? どうして車のボンネットに乗っているの? じゃなくて、その姿がかっこいいからやっている。それと同じ」

今回、紅が演じる主人公は、つねにキセルを持つ。その意味も「かっこいいから」と理解。長い髪の毛のさばき、和装ベースの衣装の着こなしも「ただ、かっこよく」見せるべく、研究を重ねてきた。

主人公の役柄は、自ら積極的に剣をまじえはしない。登場人物を操るように俯瞰(ふかん)し、不敵な存在感を醸し出す。余韻でも、芝居を動かす。その後のショーは芝居とは一転。スピーディーに転換する。今春の大劇場作のリニューアル拡大版。台湾でのヒット作を現地の言葉で歌う場面などが加えられた。

夏真っ盛りだった8月の稽古時から「朝のはよから夜遅くまで、みんなでワイワイと。休憩時間も『しんど~』とか言って、しゃべって笑っていた」そう。オフも皆で集まり、遊ぶ。「でも結局、あの場面は…とか仕事のこと話しているんですけどね」と笑った。

大阪出身で、笑いのセンスにたけたトップのもと、組は活気にあふれる。今回、ショーでは、紅の得意キャラ「紅子(べにこ)」も登場。大阪公演初日には、客席との掛け合いも楽しみ「紅子も台湾へ行きます。ゆずるちゃんと一緒に海を渡るわよ」とわかせた。

「私が組を背負って-じゃなく、みんなで台湾へ乗り込み、爆発させよって感じ。爪痕、思い切り残したい(笑い)」。大阪人トップが率いる明るい星組。エネルギー放散へ準備は十分だ。【村上久美子】

◆異次元武侠ミュージカル「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀~虚淵玄」(脚本・演出=小柳奈穂子氏) 謎多き主人公・凜雪鴉(りんせつあ)をはじめとする個性豊かな登場人物が、異世界を舞台に、戦いやスリリングな駆け引きを繰り広げる。原作は、台湾で老若男女に親しまれている伝統的な人形演劇「布袋劇」。16年にテレビ放送され、17年12月に新作が劇場上映。今年はテレビ「シリーズ第二期」放送が決まっている。

◆タカラヅカ・ワンダーステージ「Killer Rouge/星秀☆煌紅(アメイジングスター☆キラールージュ)」(作・演出=斎藤吉正氏) 「素晴らしい」「格好良い」キラーとルージュ(紅)をテーマに、今春、宝塚大劇場で上演されたショーの最新版。台湾の人気音楽なども盛り込まれている。

☆紅(くれない)ゆずる 8月17日、大阪市生まれ。02年入団。08年「スカーレット・ピンパーネル」で新人公演初主演。14年「風と共に去りぬ」で全国ツアー初主演。16年11月に星組トップ。17年1月「オーム・シャンティ・オーム」でトップ初主演。その後「-ピンパーネル」で本拠地お披露目。今春の本拠地作では落語「地獄八景亡者戯」をもとにした異色の和風ミュージカルに主演。身長173センチ。愛称「さゆみ」「さゆちゃん」「ゆずるん」「べに子」。