宙組トップ真風涼帆は、退団を発表した故郷・熊本の大先輩、元雪組トップで専科スター轟悠の“教え”を胸に前進を続ける。「シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」「デリシュー!-甘美なる巴里-」では、相手娘役に2人目の潤花を迎え、新トップコンビの本拠地お披露目。原点回帰の思いも秘め臨む。兵庫・宝塚大劇場は26日~8月2日、東京宝塚劇場は8月21日~9月26日。

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相手娘役に2人目の潤花を迎え、新コンビでの本拠地お披露目。トップ就任3年半が過ぎ6作目の本拠地作で、真風は、シャーロック・ホームズにふんする。

「言わずと名の知れた不朽の名作で、世界中の方たちから愛されている作品、キャラクター。鋭い洞察力、観察力、推理力は並外れた力があり、愛すべき性格を持っているのかな」

脚本の生田大和氏と相談し、役柄を練り上げる。公演ポスターで持つパイプにもこだわりがあった。

「生田先生が取り寄せてくださった貴重なパイプ。『世界に1個しかない』とも…。パイプの吸い方などを動画で見て、調べ、先生にうかがいました」

潤花からは「明るく前向きに、役に向かって頑張っている姿を見て、私自身も勉強させてもらっています」と刺激も受ける。

ショーは「スイーツ」がテーマ。「スイーツも人を幸せにする。宝塚とありそうでなかったコラボレーション」。組子がスイーツの精にふんする場面もある。

「プロローグからとっても豪華で、すごく楽しみ。みんなが大階段に並んでいて。その後に107人のカンカンがある。最初から飛ばしてって感じ(笑い)」

サヨナラ公演中の月組トップ珠城りょうは8月に退団予定。以後は、5組トップで最長キャリアになる。故郷の大先輩で、専科スター轟悠も退団を発表した。

「(轟の退団は)信じられない。とても寂しい。轟さんがいらっしゃらない宝塚を私は知らないので、実感がわかない。『サプライズでした~』ってなるんじゃないか? と思うぐらい。宝塚にいらっしゃらなくなるということが、あまりにも想像できなくて」

雪組トップを退いた後も、劇団から「春日野八千代さんの後継に」と請われ、専科へ移った轟は、男役の生きた教科書として、誰もが背を追う存在だった。真風にとっても、自分を導いてくれた1人でもある。

「信じられるようで、信じられない…。でも、実際これが本当だったら…」

いまだ半信半疑。ただ、同時に決意も口にした。

「残った自分たちが、しっかりと、宝塚という看板を背負って、責任をもって歩んでいかなきゃいけない。ですが…やっぱり信じられない。今は(思いが)グルグルしておりますね」

175センチ長身。ノーブルな立ち姿で、下級生時代から注目された真風は、轟との共演で、男役の原点を見つめ直した時期があった。

「(舞台で)ご一緒すると、ご自身の積み重ねてきたもの、宝塚への思い、男役、娘役に対してのすべてを教えていただいた。何かひとつとはあげられない」

取材の数日前にも、劇団で会い、話したという。

「『男役も、娘役も、品格を忘れないでいてほしい』とおっしゃっていた。ご自身が体現してくださっているじゃないですか。清く正しく美しく、男役の美学を。でも、あまり考えないように。いや、実感がわいていないので…」

コロナ禍で稽古の進め方、ファンとの交流、宝塚歌劇にも新たな生活様式が浸透する。その中で、あらためて思うのが「感謝」だ。

「当たり前が当たり前じゃなくなって、お仕事も公演も、お稽古も、たくさんの方の協力がないと成立しない。それでも公演させていただけるのは、感謝しかない。そこをしっかりと受け止めていきたい」

先の読めない時代に、思いを強めることがある。

「明日の自分に恥じない。今を生きる」

これが真風のテーマだった。「そこに『毎日を楽しむ』というのも大事だな」と感じるようになった。原点を胸に、進化し、明日へとまた1歩を踏み出していく。【村上久美子】

<初舞台生、楽しみ>

宝塚大劇場公演で今春入団の107期生が初舞台を踏む。恒例のラインダンスもあり、真風は「すごく豪華な初舞台ロケットになるとお聞きしているので、今から自分も楽しみです。やっぱり、春になると、感じることは多い。みんなの頑張る姿を見たら、きっとまた胸が熱くなるのかなと思います」。入団時を思い返し、初舞台生を見守る。

☆真風涼帆(まかぜ・すずほ)7月18日、熊本県生まれ。06年入団。星組配属。新人公演主演5回。15年5月に宙組、17年11月に相手娘役に星風まどかを迎え同組トップ。19年「オーシャンズ11」では、11年新人公演でも主演したダニーを好演。星風に代わり、潤花を2人目相手娘役に迎え、新コンビで本拠地初作品になる。身長175センチ。愛称「ゆりか」「すずほ」。

◆ミュージカル「シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-」~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~(作・演出=生田大和) 英小説家コナン・ドイルが生み出した名探偵シャーロック・ホームズが主人公。宿敵となるジェームズ・モリアーティ教授は芹香斗亜、潤花は主人公の心を動かすアイリーン・アドラー役。

◆タカラヅカ・スペクタキュラー「デリシュー!-甘美なる巴里-」(作・演出=野口幸作) フランス語「デリシュー」は「とてもおいしい」を表す。スイーツをテーマにした豪華なパリ・レビュー。宝塚大劇場公演では、107期生が初舞台を踏む。