4年の任期を終え、6月に社長を退任する両氏が、先週それぞれ最後の定例会見を行いました。開局50周年や本社移転の大プロジェクトを成功させた高橋氏と、民放4位に転落したまま退くことになった亀山氏。発言も表情も場の空気も対照的で、両者のコントラストが印象に残りました。

 高橋氏は、任期中に開局50周年をまたいでの4年間。「長かったな」と笑顔で振り返りました。「コンテンツの質を上げることに全力を尽くす」という就任時の“公約”は、実際そうなったと思います。「記念番組」の名のもと、同局としては大きな予算をかけて「永遠の0」を制作したり、宮部みゆき、湊かなえら人気作家のベストセラー小説をスペシャルドラマ化したり。スター俳優を多く抱える芸能事務所とのパイプもこつこつ築き、今やテレ東のスペシャルドラマは視聴者満足度調査でも高い評価を得るようになりました。

 「大きな局にはない取り組みを必死にやる」というテレ東流も継続しました。50周年には代々木で小さなフェスも行いましたが、役員も社員も売り子として働く小回りの良さ。高橋氏は「結束が生まれたし、番組作りも弾けようという機運が出た」。本社移転も、民放キー局の中で唯一賃貸という形で成功させています。

 次は代表権のある会長職に就任するとあって、今回の社長退任も「組織は一定のサイクルで新陳代謝した方がいいので、いい潮時」と余裕があります。最後は、動画配信の新会社設立を発表して終わるという華々しいラスト会見でした。

 一方、高橋氏の翌日に行われた亀山氏の定例会見は、淡々と4年間を総括する感じ。「視聴率の回復を託されながら、道筋を作れないまま業績が落ち込み、責任を痛感している」。「ロングバケーション」「踊る大捜査線」などの大ヒットドラマをいくつも作った敏腕プロデューサーだけに、取材陣の質問が「クリエイターが経営をする難しさ」に集中したのも、この社長らしい光景でした。

 視聴率4位への転落、減収減益、お膝元のドラマの不振など、いかにもしんどそうな4年間でしたが、最後まで下を向かなかったのが印象的です。定例会見では最初に視聴率動向の報告がありますが、そのたびに「現場は下を向かずに頑張ってほしい」と言い続け、誰よりも本人が実践していました。「自信を取り戻すことが大切と経営に携わってきた。下を向かずにと鼓舞してきたつもりだったが、力及ばずだった」と総括せざるを得なかったのは、やはり残念そうでした。

 4年間の明暗は分かれましたが、取材席から見る限り、2人は似ている部分もありました。畑違いという意味では、高橋氏も日本経済新聞社常務からのテレ東社長。やはり「最初の半年、1年は慣れなかった」そうです。2人とも取材者に誠実で、どんな質問も受け、攻めっ気とユーモアあふれる答弁でがんがん発信していくタイプ。定例会見は取材各社との共同開催なので、座持ちのいい2人は記者たちからも人気がありました。

 亀山氏は、好調なBSフジの社長に就任します。「普及のためには話題作りしない。BSにも社長会見はあるらしいので、ネットに注目される発言をした方がいいのかな」。ノーマークだったBS社長会見ですが、今後は各社の出席率が跳ね上がりそうです。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)