10月スタートの秋ドラマの視聴率が低調だ。4~6%台で大苦戦している作品が散見され、一気に3%のダウンを記録する例も多い。「半沢直樹」「私の家政夫ナギサさん」など、準備万全の4月ドラマが事実上の7月期ドラマとして放送された前期と違い、今期は「つなぎにならざるを得ない事情」(ドラマ関係者)が、内容や数字に表れているという。

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11月13日現在、2ケタ視聴率をキープしているのは、テレビ朝日「七人の秘書」(木曜9時)、TBS「危険なビーナス」(主演妻夫木聡、日曜9時)、フジテレビ「監察医 朝顔」(主演上野樹里、月曜9時)の3作のみ。「七人の秘書」は枠の強さで13%台を維持しているが、「ビーナス」は5話現在10・9%、「朝顔」は2話現在10・3%と、いずれもギリギリだ。

「ナギサさん」で最終回視聴率19・6%を記録したTBS火曜ドラマ枠の「この恋あたためますか」(主演森七菜、火曜10時)は、4話現在8・3%。初回7・5%だったフジ「ルパンの娘」(主演深田恭子、木曜10時)は4話で4・9%を記録した。テレビ朝日開局60周年記念作品「24 JAPAN」(主演唐沢寿明、金曜11時15分)は、3話(4・5%)と5話(4・6%)で4%台を記録している。

1話から2話で一気に3%下げた番組も多い。13・8%でスタートした「朝顔」は2話で3・5ポイント下げて10・3%。同じくフジ「姉ちゃんの恋人」(主演有村架純、火曜9時)は初回9・2%で2話6・2%、TBS「恋する母たち」(主演木村佳乃、金曜10時)は初回10・5%で2話7・4%など。内容と視聴率が必ずしも一致するわけではないとはいえ、初回を見に来てくれた客が一気に3%も離れるのは残念なことだ。

7月期は、最終回視聴率がそれぞれ32・7%、19・6%、14・5%を記録したTBS「半沢」「ナギサさん」「MIU404」の3作品など、全体的に華やか。7月末に放送を終えた日テレ「ハケンの品格」(全話平均12・7%)、テレ朝「BG~身辺警護人~」(同15・6%)など、視聴率表も充実していた。

これら“夏ドラマ”は、本来4月期の春ドラマの作品群。緊急事態宣言による撮影休止、放送延期という事態に見舞われたものの、民放改編の本丸である4月改編のラインアップとしてきちんと準備されてきたものだ。あるドラマ関係者は「動きだしたのはコロナ前で、作品の世界観が固まっていたことは大きい。どの局も1、2話あたりまでは撮っており、コロナで1から、というわけではなかったこともモチベーションにつながった」。

一方、今期の秋ドラマは、「まったくのコロナで始める最初のシーズン」とし、「放送回数も、スタートの日程も分からないまま立ち上がり、起承転結を作り込むことができない。せめて回数がはっきりしないと、どこに集中していいのか演出がブレる。意識散漫とまでは言わないが、『集中できない』という制作者の声はよく聞く」。

10月早々にスタートしたドラマもあれば、「朝顔」のような11月スタートのドラマもあり、「ドラマ界全体として、通常に戻るまでのつなぎの段階という難しさが、今期の微妙な感じにつながっているのでは」と話す。

放送休止をはさんだものの、コロナ前に大量に番宣できていた“7月期ドラマ”と違い、宣伝の機会が大幅に減っていることも「視聴率的にはつらい」という。民放の中堅テレビマンは「ドラマの番宣番組がほぼないのは仕方がないとして、バラエティー番組におじゃまして街歩き、みたいなことにも感染対策で人数制限がある。主要キャストが何人かそろわないと、街歩きやひな壇に誰か1人参加しているだけでは、ドラマの世界観は伝わらないんですよ」。

それぞれの条件のなか、ベストを尽くしている秋ドラマはまだ中盤。これからの見応えと巻き返しに期待したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)