「なごり雪」や「22才の別れ」などのヒット曲で知られるシンガー・ソングライター伊勢正三(65)の新アルバムで、大久保一久(67)とのフォークデュオ、風時代のライブ音源が初めてCD化されることが22日、分かった。

 アルバムは「伊勢正三 LIVE BEST」(11月8日発売)で、07年7月に一夜限りの再結成をした「『風』の最後のステージ」のDVDも封入され、初めて映像化される。

 このほどインタビューに応じた伊勢は、これまで風時代の音源を商品化しなかった理由を「僕の意思でした」と明かした。

 「好きな音楽を何かに縛られることなく、自由にひょうひょうとやるつもりで風を始めたので、営業的に何かをしかけることをよしとしなかった」。だが、自身の45周年記念という節目にあたり「全国のファンの人たちに何か喜んでもらえるものを届けたい」という気持ちが強くなり、思い直したという。

 商品は3枚組。DISC1は、風時代の曲を伊勢が1人で歌唱したコンサート「風ひとり旅」(09~14年)の中からえりすぐった15曲。そして、DISC2が風特集だ。75年4月、かぐや姫の解散コンサートで行ったファーストステージや、77年に日本武道館で演奏した楽曲など19曲。それに、貴重なDVDのお宝映像が加わる。

 商品化が決まった際、08年に脳血管障害で倒れ、現在も闘病中の大久保に電話したという。「すごく喜んでくれた。今はまだ体調が思わしくない彼が、少しでも元気になって欲しいと思っています」。大久保との関係については「楽屋で仲の良かった2人のまま、1度ももめたことのないのが誇り。最高の相棒だったと今更ながら思います」。

 デビュー曲「22才の別れ」で始まった風の活動は75年からの約4年間だけ。だが、フォーク全盛時代を風のように駆け抜けたサウンドと作品は、多くのファンに鮮明な記憶を残している。活動休止から38年、伝説の音源の封印が解かれる。【松本久】

 ◆伊勢正三(いせ・しょうぞう)1951年(昭26)11月13日、大分県生まれ。71年に、南こうせつとかぐや姫を結成し、75年に解散。同年に、風を結成。デビュー曲「22才の別れ」はミリオンセラー。約4年の活動でシングル6枚、オリジナルアルバム5枚を発売した。現在はソロやユニットなどで音楽活動を続けている。長女は女優伊勢未知花(36)。