11月26日。演歌歌手山川豊の、言葉に対する繊細な気配りに感心しました。

 山川の歌唱曲を対象にしたカラオケ大会を実施し、約100人のファンが審査員として会場を埋めていました。

 イベント終了時のことです。司会者が「すみやかに退場してください」と呼び掛けた直後、山川が「『退場』じゃないでしょう。『ご退場』をお願いしますでしょう。『退場』なんて失礼。皆さん、ごめんなさい」と謝罪したのです。

 「退場」も「ご退場」も、トークの流れの中ではそれほど変わりはありません。でも、「退場」には確かに命令的なニュアンスがあります。山川はほんのわずかでも、相手に不快感を与える可能性のある言葉を嫌った訳です。

 1人1人のファンを大切にしていることが伝わってきました。

 そんな山川ですが、デビュー当時は順風満帆そのもので、生意気を絵に描いたような人物だったそうです。今年で36年を迎えた芸歴を重ねていく中で、人の心の痛みを知るような多くの経験をしてきたのでしょう。

 たかがひと言、されどひと言。言葉を選ぶことは本当に難しい。それを生業にする身として、「他山の石」にしないといけないと自戒しました。