黒木華(28)と多部未華子(29)が3日、東京・明治記念館で行われた映画「日日是好日」(大森立嗣監督、13日公開)特別試写会で、9月15日に乳がんが原因の全身転移で死去した樹木希林さん(享年75)と、同作で初共演した思いを語った。

イベントは、参加者全員が着物を着て映画を楽しむ試写会「KIMONO de CINEMA」として開催され、参加者270人を前に、黒木と多部、原作者のエッセイスト森下典子氏(62)が着物姿で登壇したが、発案は希林さんだった。アドバイザーを務める観世あすか氏は「樹木希林さんから私が与えられたミッションです」。続けて映画に向けた希林さんの取り組みと、イベントに至る経緯を語った。

観世氏 1年前、突然いらっしゃって「私、お茶の先生の役をやるのよ。お茶、教えなさいよ」と。それから1年半、暑い最中、熱心に役作りをなされました。本気で工夫を凝らされ、なさっておられました。

観世氏は3月5日に、鹿児島の病院にいた希林さんから電話で「私、頭蓋骨からひざまで病が進行し、余命は年内って言われたの。これから先の仕事は断ります。この映画に残されたエネルギーと時間を使いたい。あなた、真剣に協力して下さい」と言われ、宣伝協力を要請された。その後、希林さんが東京に戻ってから一緒に考えたイベントが「KIMONO de CINEMA」だった。

希林さんは7月31日に京都・建仁寺で行われた試写会に登壇した際、つえをつかないと歩けない状態で、8月に大腿(だいたい)骨を骨折した左足にも既に違和感があったのか、右足で全体重を支えていたという。それでも東京に戻る中、観世氏に「これでいい船出が出来た。しんどいけど物作りは大事なのよ。映画は撮って終わりじゃない。撮ってからが大事なのよ」と語った。

9月4日に高円宮妃が出席し、都内で行われたプレミアム試写会の際、希林さんは入院中で出席がかなわず、直筆メッセージを寄せたが、観世氏に舞台あいさつ後「観客の反応を直に教えて欲しい」と連絡してきた。

そんな希林さんだが、「日日是好日」への出演をためらった時期もあったというが、黒木の出演に心を動かされ16年12月に出演を決めたという。黒木と多部と初共演し「黒木さんと多部さんが自分を継いでくれる次の俳優さん」と評価し、覚悟を決めて宣伝も先頭を切って走ったという。

黒木と多部は、撮影中に質問を数多く受けたと振り返った。多部が「直球で『どこ住んでるの?』『誰と暮らしてるの?』『誰と付き合ってるの?』と聞かれ、頑張って答えました」と笑いながら振り返った。黒木は「どういう人がいいですか?」と良い結婚相手について聞いたが「自分と同じくらいの人しか、来ないわよ」と返され「もう少し、自分、頑張ろうと」と言い、笑みを浮かべた。

希林さんから学んだことを聞かれると、黒木は「役を生きるということを、すごく感じました。こういう風になりたいというか。お着物の着方は盗もうと思いました。年齢の重ね方が仕事に出る。『女優さんは、お着物を勉強しておかなきゃダメよ』と言われました」と希林さんからの教えを今後の女優人生に生かすと語った。

多部は「希林さんは『せりふが全部完璧に言えることが全てじゃない』とテレビ番組で言っていたけれど(せりふの)意味は合っているけれど、自分の言葉で発しているのを間近で見て、すごいなと思った。出来るかと言われたら出来ないんですけど、言葉を自分のものとして、正確な並びじゃなくても伝えるのは、なかなか簡単に出来ることではない」とせりふに対する考え方を学んだと語った。【村上幸将】