嵐の活動休止発表会見で、大野智(38)が口にした言葉が重く響いた。「自由な生活がしてみたい」。その言葉の裏に、大野の真面目さと控えめな性格が浮かび上がって見えた。

グループで最年長だが、最年少の松本潤(35)に「しっかりしろ」と言われるなど、性格はおとなしくのんびりしているが、努力の人だった。

歌とダンスはジャニーズ事務所屈指の実力を持つが、才能に頼らなかった。自宅の倉庫やガレージで踊りの練習をしたり、レコーディングでは、くしゃくしゃになるまで歌い込んだ歌詞カードを小さく折りたたんで持参したこともあった。櫻井翔(37)は「才能の人のイメージがすごく強いけど、裏には大きな努力があるんだと思う」と尊敬していた。

本人も認めていたが、仕事への欲があまりなかった。CDデビュー前のレッスン生(ジャニーズJr.)時代。京都での長期公演を終えた後、事務所を辞めようとしたこともある。何度か今後やりたいことを聞いたが、答えはいつも同じだった。「基本、仕事に対してはないんだよね。でも与えられた仕事は楽しんでやるし、与えられたものをやるだけだね」。

多くを語るタイプではなかったが有言実行。与えられた仕事はきっちりこなした。ドラマのセリフは少し空いた時間や夜に覚えられず、早く仕事が終わった日や休日の昼間に集中して覚えていた。器用ではなかったが、いつもセリフ覚えを完璧に仕上げた。

シャイな人柄は昔から変わらなかった。ジャニーズ事務所の入所オーディションでは、偉い人に見つからないよう最後列に並んだ。数年前、大事にしていること=ポリシーを聞くと「いかに目立たないようにいるか。ただでさえ目立つ仕事でしょ。年食うごとに、それがエスカレートしている」。趣味の釣りの魅力を聞いた時は「誰にも邪魔されない。周りの目を気にしなくていい。開放感かな」と話していた。

個人的には、控えめな人がスポットライトに当たり続ける人気業に、ずっと慣れないでいた印象がある。それでもアイドルとして、真摯(しんし)に活動し続けてきた。本来の自分とアイドルの自分。そのズレの蓄積が、休みや息抜きではなく、いったん自由な生活を求めた理由の1つかもしれない。