上演再開から3日後に再び公演中止となった宝塚歌劇団。新型コロナウイルスの感染拡大による影響から、スポーツ、エンターテインメントをはじめ、各興行が自粛を継続する中での再開だったが、結果的には「暴挙」となってしまった。

宝塚歌劇団は2月27日に同29日~3月8日まで、兵庫・宝塚大劇場の星組公演、東京宝塚劇場の雪組公演を中止。告知通り、9日から宝塚の星組公演を、休演日だった東京は10日から上演を再開した。

9日の宝塚での星組公演は新トップコンビのお披露目千秋楽で、専科スターの退団公演でもあり、熱心なファンから再開の要望もあったとみられる。東京はすでに退団発表済みのトップコンビによる公演。10日は2公演で、うち1公演は貸し切り公演だったこともあって、総合的な判断から、劇団は先陣を切る形で再開へ踏み切った。

タカラジェンヌにはそれぞれ、スターを応援するファンの集まりがある。“私設ファンクラブ”のようなグループの集合体が、劇団全体を応援するような形になり、ファンとスターの近い関係が築き上げられてきた。とりわけ、プラチナチケットを獲得し、退団公演千秋楽に来るファンのおおよそは、“身内”という感覚もあったと思われる。

とはいえ、いくら発熱検知、消毒、換気など最大限の対策を施したとしても、無症状、無自覚の保菌者が他者へ感染させるリスクはある。劇団は、再開後の批判の声も覚悟していたはずだが、100周年以降、劇団は全国的に認知され、“ライトな”ファンが増えていた。

再開を知った全国のファンからの意見が相次いだ。「生命の危機」へ危機感の欠如を指摘されるなど、批判の数は「想定を超える数」だったと想像される。一方で、古くからのファンの間でも心配する声はあった。「大好きだからこそ、時期尚早。こんなに早く再開をしてもし問題が起こったら、宝塚歌劇の歴史を汚してしまう」と考える人もいた。

劇団がファンの声に戸惑っていると、10日夕には、安倍晋三首相が、文化イベントの自粛期間延長を要請した。新たな「政府方針」が発表され、再び、公演中止へと動かざるを得なくなった。

結果、13日に宝塚大劇場で開幕予定だった花組公演は先送り、東京公演中の雪組公演にいたっては2度目の中止となった。次に再開するタイミングは、他者に比べても難しくなってしまった。出演者のモチベーションも厳しいものになる。劇団は時期を読み違えた。【宝塚歌劇担当=村上久美子】