尾上菊之助(43)が座頭を務める名古屋・御園座「錦秋御園座歌舞伎」が3日に開幕する。新型コロナウイルス感染拡大の影響で休館していた御園座が8月に一部再開して以来、歌舞伎公演は初。公演への思いや、御園座の思い出などについて語った。

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今回、「連獅子」に初めて挑むほか、17年のインド公演以来となる「鐘ケ岬」を踊る。女形のしっとりした風情を出す「鐘ケ岬」に、勇壮な「連獅子」。対比も楽しめる構成になっている。

御園座への出演は6年ぶりだ。6年前も10月の錦秋公演だった。

「10月の御園座さんといえば歌舞伎公演というのが風物詩になっていると言っていただくことがございますので、10月に御園座さんの舞台に立てることはとてもうれしく思います。(18年に)新しくなってから初めてなのでどんな劇場かというのもワクワクしています」

近年、「マハーバーラタ戦記」「風の谷のナウシカ」など、新作歌舞伎づくりに積極的に取り組んでいる菊之助は「御園座は新作歌舞伎の原点」と語る。

「今まで『NINAGAWA 十二夜』『マハーバーラタ戦記』『風の谷のナウシカ』と新作歌舞伎をつくりましたが、原点は04年御園座で上演しました『地雷也豪傑物語』です。この新作作りには父菊五郎が主になり、私も参加しましたが、制作過程で芝居づくりの面白さを経験し、その後の新作歌舞伎作りの土台となっています」

古典の大きな役に挑戦してきた劇場でもある。02年には、音羽屋の芸として大切にしている「仮名手本忠臣蔵」の勘平を演じた。古典、新作とさまざまな思い出が詰まった御園座で、初めて挑む「連獅子」への思いも深い。クライマックスの豪快な毛振りで知られる演目で、厳しさの中にある親子の情愛が題材だ。

「親獅子が仔獅子を千尋の谷に突き落とすという古事をテーマにつくられた踊りです。意味を大切にし華やかに踊りたいです。後半は豪快に踊ります。立役舞踊の華やかさと豪快さを楽しんでいただけましたら」

長男丑之助(6)は、父菊五郎(78)とともに、4日初日の東京・国立劇場で「魚屋宗五郎」に出演する。

「稽古にも立ち会っていましたが、つい稽古が厳しくなってしまいます。親獅子が仔獅子を千尋の谷に突き落とすまではいきませんが、東京と名古屋で離れ離れの中、精いっぱい元気よくつとめてほしいですね」

公演は18日まで。尾上右近、中村萬太郎はA、Bの日程で交互出演。ほかに、解説「歌舞伎のみかた」も。