歌舞伎座十月大歌舞伎に出演中の中村七之助(37)が7日、同所で取材会を行った。コロナ禍で歌舞伎公演が行われなかった5カ月間を振り返り、「このまま続いたら廃業だなと思った」と胸の内を語った。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、歌舞伎座は3月から7月まで公演中止となり、8月に再開したばかり。8月の公演を「うれしかったけど、正直な話、千秋楽を迎えられると思っていなかった」「コロナじゃなくても、微熱が出ただけで終わるというプレッシャーが」と振り返った。5カ月間にわたり公演がない経験は初めてで、「もうできなくなっちゃうんじゃないかと思った。生活には必要ない職業なので、このまま続いたら廃業だなと思った」と話した。

モチベーションとなったのは、受け手の温かい言葉だったという。「不要不急という言葉がある中、『歌舞伎は不急だが、不要ではないですよ』と言ってくださって。うれしかったです」。7月には初めての生配信ライブにも挑戦した。「『待ってました』とたくさんコメントをいただき、涙が出ました」。

歌舞伎座では、イベント収容人数が緩和された現在も50%の客席で万全を期して公演中。史上初の4部制を導入し、それぞれ1時間程度の演目を上演している。換気と密対策のため、各部ごとに出演者と裏方を総入れ替えする徹底ぶりで、舞台以外での出演者同士の会話も行っていない。

1部の「京人形」に出演中の七之助は「38分の演目で8000円は高いなあ」とプレッシャーを感じながらも「8月から1度も(感染者を)出していない。歌舞伎座は安心なのでぜひ見に来てほしいと、自信をもって言えます」。

「京人形」は、花魁(おいらん)の人形が、動いて踊りだす楽しい演目だ。彫師役の叔父、中村芝翫が箱を開けると、七之助の美しい京人形ぶりに客席から大きな拍手が送られる。共演者と会うのは舞台のみのため、「芝翫おじとは、箱を開けた時に『おはようございます』という感じ」と笑う。客席からは掛け声禁止で、拍手のみ。「さみしいですが、心の中で『中村屋!』って、自分で奮い立たせています」。

「はやり病が治まって にぎわい戻る木挽町」など、コロナ禍を意識したせりふも足すなど、今しか見られない特別演出も。先が見えない社会情勢の中、観客は緊張の中で静かに見ており、「それは板の上でも感じる」という。「ちょっと緊張しすぎ」「シーンとなっているとこっちも緊張する」と客の立場を気遣い「ほっこりする演目なのでぜひ楽しんでいただきたいです」としている。

東京・歌舞伎座で27日まで。