佐藤二朗(52)主演のNHKドラマ「ひきこもり先生」(土曜午後9時)が今日12日、スタートする。

佐藤演じる元ひきこもりの主人公・上嶋陽平が、とあるきっかけから市立中学の不登校生徒が集まる学級の非常勤講師を依頼され、悪戦苦闘しながら周囲を巻き込み、“1歩踏み出す”人びとを描く、ハートフルな学園ドラマ。同作を手がけた、せんのともつぐプロデューサーに、ドラマの見どころやこだわりなどを聞いた。

「企画を考えたのは2年前でした。『パラレル東京』という作品を一緒にやった石塚嘉監督と、学園ものをやりたいねとなって。その中で、オランダでひきこもりの人が先生をやっているというのを聞いて。ひきこもりの先生が不登校の生徒に寄り添うものをやろうよと2人で発案したんです」と振り返った。

主演は企画段階から佐藤以外、考えられなかったという。「新しいヒーロー像を作りたかったんです。『これやるには二朗さんしかいないよね』って、2人(せんの氏と石塚氏)の中でなったんです。二朗さんも企画書を読んでいただいて、『面白い、やろう』っていってくださいました」。

コメディー演技のパブリックイメージが強い佐藤だが、問題を抱える難役を見事に演じている。「最近ははねる演技のイメージですけど、昔からじとっとした演技もできるすごい俳優さんだなって思っていました。実際に見ていただくとわかるんですけど、演技がすばらしいですよ。自分でやるっていってくださっただけあってね。(放送前の)プレビューを見て秀逸だねって言い合いました」。演技プランも緻密に設計していたといい、序盤の話しかけにくい雰囲気から、話が進み生徒と関わるにつれてほぐれていく表情の変化も注目ポイントだという。

若者の自立を支援する機関や教育委員会などに取材を重ね、不登校生徒やひきこもる大人の実態を調べ上げた。専門家の考証も入り、しっかりと描いた。「ドラマの中で高橋克典演じる校長の『ひきこもりは100万人いる』というようなセリフがあるんですね。実際にそれくらい重大なことなんですよね」と問題意識を明かした。

佐藤演じる上嶋のキャラクターにリアリティーをもたせるために、離婚で離ればなれになった自身の娘に対して負い目があるという設定を加えた。「裏のテーマとしてそういう個人の問題の背景をちゃんと作りたかったんです。『生徒たちのために』っていう、ただのきれい事で終わらなくて、どういう苦しみなのかっていうのがないとリアリティーがないなと。吉田美佳子が娘役を演じますが、大事な駒ですね」。

ドラマにどんな思いを託したのか。「ひきこもりの方たちを元気づけるというか応援したい、1人で悩むなとか、話をしていこうとかそういうことを思って作っています。見る方の中には『こんなんじゃない』っていうのもあると思う。でも本当にピュアな、頑張って欲しいという気持ちで作っている。それをくみ取ってちょっとでも頑張って欲しいなっていう気持ちですね」。コロナ禍で社会変化が大きいこの時代。居場所を失った人々へ温かいメッセージを送る。