会見、囲み、直撃…さまざまな取材形式の中でも1対1の対面インタビューは、俳優やタレントの本音を聞ける貴重な機会だ。なるべく肩の力を抜いて気楽に話してもらえるように心掛けている。が、時として意図しないこちらの言い間違いが、場を和ます効果を生むこともある。

先日行った、Sexy Zone中島健人(27)の取材中のことだ。コロナ禍の自粛期間中の思いや心掛けを聞こうとして、つい「『謹慎』期間中はどうでした?」と聞いてしまった。これが中島のツボにはまってしまった。一瞬、エッという顔をした後、思わず吹き出した。「いや、謹慎しなくてはならないようなことはしていませんし、それは絶対ないように心してますから…」と搾り出すように言って、また笑いだした。

「すいません。自粛期間でしたね」とわびると、「それはもちろん分かっているんですけど…」と言いながら笑いが止まらない。確かにストイックに「王子様キャラ」を追及してきた中島は「謹慎」を余儀なくされるような行動とは一番遠いところにいる。そう考えたら、ミスをしたにも関わらず、こちらも笑いが止まらなくなった。

もともとSNSなどでの発信に前向きだった中島は、この期間中にますますその道の研究や試行を心掛けていたようで、実はこの質問には話したいことがたくさんあったのだ。それも「笑いのツボ」の誘因となったのかもしれない。

還暦をとうに超えて、言い間違いは歳のせいと言いたいところだが、実は22年前にも同じようなことがあった。

当時、ニュース番組に携わってちょうど20年を迎えた安藤優子キャスター(当時40)のインタビュー中のことだ。

大学在学中にテレビ朝日の報道局でアルバイトのリポーターとして働き始めた安藤さんは「もう散々なことを言われました。報道の現場は甘い気分でやれるところじゃない、女の若さをアピールしてどうするんだとか。あることないことしかられて、毎日トイレで泣きました」と振り返った。 取材当時の凜(りん)としたキャスターぶりからは想像しにくい過去だった。それは教訓ともなったそうで「いつかは若さがなくなることをおじさん記者たちに教えられた気がします。それからです。女を売りにしないことに決めました」ときっぱり話した。

このコメントが心に残ったので取材の後半にキャスターとしての決意を聞く際の「振り」として使ったのだが、実際に私の口をついて出たのは「先ほど、女を捨てたとおっしゃいましたが…」だった。

安藤さんは途端に吹き出し、「ひどい! 捨ててませんよ。売りにはしてませんが、女ですから…」と言いながら、また笑った。確かに毎日きりりと番組を仕切る安藤さんはまぎれもなく「女性」であり続けていた。失言をわびながら、こちらも笑ってしまったことを覚えている。

どちらも揺るぎない立ち位置があるからこそ、おおらかな「笑い」の対応となったのだとは思う。

中島があまりにも気持ち良く笑ってくれたので、22年前の出来事も思い出した次第である。【相原斎】