元プロボクサーで単身、中国に渡って俳優になった逆輸入俳優・木幡竜(45)が「生きててよかった」(鈴木太一監督、5月13日公開)で映画に初主演することが25日、分かった。

劇中で、長年の戦いが体をむしばみ、ドクターストップで強制的に引退を迫られたボクサーを演じる。「この映画は、いろいろ意味で僕自身の人生が詰まったものになったと思います。このような役を頂けたことに感謝し、全身全霊でやり遂げました」とコメントした。

木幡が演じる楠木創太は、恋人との結婚を機にボクシングを諦めて仕事に就くものの社会になじめず、ボクシングへの未練と執着を捨てきれない役どころ。ある日、ファンと名乗る謎の男から地下格闘技へのオファーを受け、再び戦いのリングに立つ物語だ。鈴木監督は「リングの中でしか生きられない人間がいる。木幡竜さんに、そのような人間の話を聞いたのはもう6年以上も前のことです。そこから脚本を書き始め、ついに映画が完成し公開できることを、とてもうれしく思います。早くこの映画を作りたいと切に願った6年以上の年月を、僕も木幡さんもジリジリと過ごし、その思いを一気に吐き出しました」と映画が完成した喜びを語った。

木幡自身、WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(28)が所属する大橋ジムに在籍した元B級プロボクサーで、大橋秀行会長の横浜高ボクシング部の後輩にあたる。サラリーマンを経て03年に俳優デビューしたが不遇の時代を過ごした。その後、オーディションで出演を勝ち取った09年の中国映画「南京! 南京!」で高評価を得て単身で中国に渡り、中国語を学びながら、翌10年にアンドリュー・ラウ監督の「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」で共演した、香港のアクションスター、ドニ-・イェンに認められた。中国を拠点にさまざまな映画やドラマに出演してきたが、「生きててよかった」で演じる楠木創太は、自らの人生と重なる部分がある役どころだ。

近年では、佐藤健主演の19年の映画「サムライマラソン」で長谷川博己の敵役を好演。21年10月期にフジテレビ系で放送された連続ドラマ「アバランチ」でも、綾野剛が演じる主人公が唯一倒せない強敵を演じ、日本国内でも注目が高まっている。

木幡は「スポーツ選手は全員が引退を経験します。引退したボクサーは次に何をやればいいのか分からず、さまよう人間も少なくありません。本当の幸せとは何なのか。リングでしか生きられない武骨な男と、そんな男を見守り続けた女の強さに注目ください」と、自らの経験と重ね合わせて訴えた。鈴木監督も「まだまだ未熟者の2人でしたが、多くの熟練者の方々に支えていただき、ここまでたどり着きました。しんどいことも多い世の中、思うようには生きられない、それでも最後は生きててよかったと笑いたい、そんなことを、今、思います」とアピールした。