8月から一部のカラオケ店で実施されていた「なりきりマイク feat.ELT持田香織スペシャルルーム」が先月、盛況のうちに終了した。自分の声が持田の声に変換されるサービスで、ヤマハの開発者は「声の特徴が分かりやすい方」という理由で持田の声を選んだと明かしている。幅広い年代で認知度の高い「個性的な声」ということらしい。
デビュー2年目の98年にELTをインタビューする機会があって、個性的と言われるその声のゆえんに触れた気がしている。
曲作りを担当し、当時はキーボードとしてステージに立っていた五十嵐充は29歳。ギターの伊藤一朗が30歳。持田は20歳だった。
番組収録後のTBSの楽屋。2人より約10歳下の持田がなかなか現れないことに「今メークを直していますんで。すぐ来ます」と五十嵐がまるでマネジャーのように気遣っていたことを思い出す。
記事を見返すと「持田が出てきた。『ドーモ。お待たせしました』。歌とは違い、意外と太い声だ。背筋を伸ばす歌い方とは対照的に、糸が切れたマリオネットのようにクタッと2人の男性の間に座る」と書いている。取材でも飾らない自然体にむしろ好感を持ったことを覚えている。
声に関するやりとりを復元すると。
-持田さんは話していると、けっこう声低いですよね。
持田 あんまり好きじゃないんです。野太いというか(笑い)。
五十嵐 ま、雰囲気が人と違うし。だからかな、初めて(歌声を)聴いた時には不思議とグッときたからね。
伊藤 例えば聴いている人は、カラオケでこれ歌いたいなあって思うんでしょうね。昔のフォークみたいに詞にたくさん(感情が)込められて、そこからメロディーが絞り出されるっていうんじゃない。いい意味でトゥーマッチにならない声なんだと思います。
五十嵐 暗いトーンの詞でも彼女が歌うと不思議に嫌みにならない。だから詞を書くときに言葉を選ばなくて済むし、歌を作る立場からいえばすごく楽ですよね。
伊藤 歌はうまくなれるけど、声の質は変えようがないものね。
-音感もいいんでしょうね。
五十嵐 音楽的にいうと譜面は読めないんですけど(笑い)
持田 ハハハハ。
五十嵐 主メロ(主旋律)を聴いて自然にハモるとかは、すごく早いです。僕の経験で言えば、今までで一番です。
持田 学校の音楽も(成績は)3くらいでほめられたことなかったけど、歌手の人が歌っているのをテレビで見て、詞もメロディーもすぐ覚えることができましたから、それが特技でしたから。
生まれながらに備わった「声」。いくつかの運に恵まれたとはいえ、選ばれるべくして選ばれた「声」とも言えるだろう。
なりきりマイクを1度も体験しなかったことを実はかなり後悔している。



