コント赤信号のリーダー、渡辺正行(67)を36、37年ぶりにインタビューした。23日付の芸能面「日曜日のヒーロー」だ。前回は、もうはるか昔の昭和のことで、よく覚えていない(笑い)。

よく1万5000人にインタビューしたとか、2000人にインタビューしたとかいう、超人のようなライターを見かける。“face to face”という条件で自分のことを考えてみると、年間30人としても1000人までいったかどうか。まぁ、半分の500人なら確実にクリアしてるだろう。

ちなみに今年の3月4日に行われた「R-1グランプリ2023」決勝の取材。ステージ上をよく見てみたら、MCの霜降り明星と広瀬アリス、審査員のハリウッドザコシショウ、バカリズム、小籔千豊、陣内智則、この全員のインタビュー経験があった。500分の6だ。

で、そのインタビュー約500人の1発目が誰あろう、リーダー渡辺正行だったのだ。すでにフジテレビの「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも」のレギュラーで、売れっ子のモテモテ芸人だった。

当時、リーダーは1986年(昭61)1月24日の30歳の誕生日に東京・渋谷のライブハウス「ラ・ママ」で「ラ・ママ新人コント大会」を始めたばかりだった。ウッチャンナンチャン、爆笑問題、ダチョウ倶楽部、バカルディ(さまぁ~ず)海砂利水魚(くりぃむしちゅー)、浅草キッド、デンジャラス、フローレンス、フォークダンスDE成子坂、BOOMER、プリンプリンなどを輩出した。

その後もバナナマン、アンジャッシュ、アンタッチャブル、オードリー、バイきんぐと続き、現在に至っている。ちなみに一昨年のM-1グランプリ優勝の錦鯉は、決勝でやったネタをその数日前のラ・ママの舞台で披露して本番で栄光をつかんだ。ちなみにお笑い音楽ユニット、ポカスカジャンの大久保ノブオ(55)は、芸人になる前のバンドマン時代にラ・ママのステージに立ったことがある。「ラ・ママでロックと芸人で出てるのは多分、私しかいないと思います」と自慢されたことがある。

名だたる東京芸人がラ・ママの舞台から巣立っている。サッカー選手のように保有権の一部でも若い無名の頃から持っていれば、渡辺は莫大(ばくだい)な財産を手にしているだろうが、リーダーは「オレは教えるなんて出来ないから、場を作っただけ」と言う。若い芸人が、リーダーのことを年寄り扱いしていじっているのを見ると、こちらは思わず「無礼者!」と言いたくなるが、案外と本人は気持ちよさそうだ。

「もう、オレのことをナベって呼んでくれるのは、三宅(裕司)さんと(立川)志の輔さんだけになった」とリーダー。つまり明大落語研究会の6代目「紫紺亭志い調」は、4代目(三宅)と5代目(志の輔)の名前を挙げる。

芸能界では、ネタ以外では怒られることのなくなったリーダーが、リフレッシュしているのが6段の段位を持つ剣道だ。

「社会人だから無理にやらなくてもいいんですよ。でも上の段の方から教えてもらったりとか、こうした方がいいよって言ってもらうのがいいんですよ。こんなジジイなのになんで勝てないんだろうと思うような人でも、やっぱりうまいんですよね。剣道は対戦競技だから、やったとかやられたとか、そういう面白さがある。そういう芸能界とは違う仲間ができたり、僕より若くても段位が上だと指導してくれるんですよ。すごい新鮮。きちんと、正座してありがとうございますって言うんです」と魅力を語ってくれた。

そして、もう1つ。手塩にかけて育てた娘さんが、学校を卒業して就職した。

「ゲームとか好きで、そういう会社に入ったんですよ。よかったですよ。親としては、ひと安心ですよね。でも最近、飯食ったら『もう辞めたいんだけど』とか言ってるから、『ふざけんなよ、お前っ』て」。

リーダーのインタビューは、記者にとっても念願だった。毎年、5月に行われる「熱海五郎一座」の時に取材しようと思っているうちに「来年、やればいいか」とチャンスを逃し続けてきた。(ちなみに今年は新橋演舞場シリーズ第9弾の東京喜劇「幕末ドラゴン~クセ強オンナと時をかけない男たち~」。5月31日~6月25日ですので、よろしく)。今年も、ダラダラと過ぎてしまいそうになったが、小説「名探偵のままでいて」で「第21回このミステリーがすごい!」大賞を受賞した、放送作家小西マサテル氏(57)をインタビューした時に目が覚めた。小西氏に「リーダーは表に出ている芸人だけじゃないんです。僕のような裏方にもチャンスを与えてくれて、世に出してくれたんです」と熱く語られて、すぐさま関係者に連絡を取った。

リーダーの取材は無事、終わった。原稿も書いた。もう思い残すことはない。自分をほめてやりたいと思うのは、取材が決まった瞬間にネットで調べてコーラを半ダース発注したことだ。目の前でリーダーの「笑っていいとも」のコーラ早飲みを再現できた。お世話になった今は亡き、フジテレビの横沢彪プロデューサーも、リーダーが所属していた石井光三オフィスの石井光三社長も喜んでくれるだろう。あとは「リーダーを尊敬しよう運動」を地道に続けて行きたい。【小谷野俊哉】