女性トラブルを認めて1月23日に芸能界から引退した中居正広氏(52)と、トラブル後も同氏を起用し続けるなどしたフジテレビをめぐる一連の問題が、映画業界にも波及している。配給大手の東宝、東映、松竹、KADOKAWAの4社で構成する日本映画製作者連盟(映連)が同29日、都内で開いた新年記者発表会でも、4社の社長にフジテレビの件への対応を巡って質問が飛んだ。
映画業界でもメジャーと言われる映連加盟4社は、フジテレビと製作委員会を組成して映画を製作、配給するケースが少なくない。例えば、東宝は公開中の「室井慎次 生き続ける者」(本広克行監督)や「アンダーニンジャ」(福田雄一監督)で、フジテレビとタッグを組んでいる。また松竹も、1月23日に都内で開いた創業130周年記念ラインナップ発表会の中で紹介した、4月25日公開の「パリピ孔明 THE MOVIE」(渋江修平監督)の製作幹事は、23年にドラマ版を制作、放送したフジテレビだ。
一方、東映はフジテレビと組んで製作した作品の公開予定が直近にはない。グループ会社の東映アニメーションが、アニメ「ONE PIECE」(日曜午前9時30分)と「ドラゴンボールDAIMA」(金曜午後11時40分)を制作し、同局で放送しているが、吉村文雄社長(59)は「フジテレビの問題と作品が放送されることにおいて直接的に何か関係することではない。私ども(東映)は制作の当事者でもないし、東映アニメーションとフジテレビの間で話があれば、それに対して対応していくことになるんだろう。現状で具体的な対応を求めたり、するということではない」との認識を口にした。また、KADOKAWAも現状、映画でフジテレビと製作委員会をともにしているケースはないという。
以上のように、映連加盟4社においても置かれている立場は違う。その上、フジテレビが日弁連のガイドラインに準じた第三者委員会を設置して事実関係を調査し、3月末をめどに調査報告書を提出する予定と発表しており、映画各社も推移を見守るしかないだろう。松竹の高橋敏弘社長(57)とKADOKAWAの夏野剛社長(59)も、基本的にはそのスタンスだ
ただ、4社の中で唯一、立場が違うのが、フジテレビの株主、しかも、持ち株比率7・93%の筆頭株主である、東宝だ。松岡宏泰社長(58)は、会見で質問された際に「少し、私どもは複雑な立場」と言及。「事業者として一緒に映画を作ったり、配給を引き受ける立場では、映連の皆さん(他の3社)と同じで、今回のことに関して深く憂慮し、できる限り早く信頼を回復し一緒に仕事ができるようにしたい」と語った。一方で「実質的なフジテレビ筆頭の株主の立場として、どう考えるかは事業者の立場とは異なる」とも口にした。
フジテレビは、社員が中居氏の問題に関与したと報じた「週刊文春」による一連の報道を受けて、1月17日に、社長を辞任した港浩一氏(72)の定例社長会見を前倒しして開催。ただ、記者クラブに加盟する社のみの参加で、クローズドなものだったことに批判が集中したため、同27日にはウェブメディア等にも参加を認める、フルオープンの形での“やり直し会見”を開き、午後4時から10時間超にわたって対応した。松岡氏は、そのことを踏まえ「株主の立場として、2回目の記者会見の前に、きちんとした調査を速やかに行い、真相をできる限り究明して、信頼を早く回復して欲しいというお伝えし、要望書という形でお届けしました。現時点で対応しているのは、そこまで」と明らかにした。
記者は、フジテレビの件について聞くのなら、映連の会見の中で4社の社長全員に質問を当てるのではなく、事業者であり株主でもある東宝の松岡社長に直接、話を聞くことが最も意味があると考えていた。よって、会見が終わった段階で同社長を追いかけて質問した。まず、要望書を受け取ったフジテレビの反応を聞くと「要望書は受け止めていただいて『ありがとうございます、拝受致しました』ということだった」と回答。その上で「フジの取り組みを注視したいというスタンス。現時点で株主としてできることは、したと思っています」と東宝としてのスタンスを説明した。そして「フジ・メディア・ホールディングスが、第三者委員会の調査の結果をもって対応するという方針を発表しているわけだし、その結果を待つことになるかと思います」と口にした。
1月27日には「週刊文春」が報道の一部を訂正し、謝罪した。松岡社長は、そうした状況をも踏まえ「問題が起きて、それほど時間がたっていない中で、さまざまなことが起こっている。1つ、1つ検討して、何かすべきことがあればする。フジテレビが第三者委員会を通じて、きちんと調査するのであれば、結果を待つのが良いのではないかと思う」と続けた。今後の影響に関しては「全く分からない。現時点では全て仮定の話になる。こうなったら、こうすると言うべきではない」と口にするにとどめた。
10時間超に及んだ、27日の会見に対する受け止めも聞いた。「10時間…本当に長いなと。質疑応答、全てどうぞと言って時間を区切らずにやった。いろいろな意見があると思う。長くて大変だっただろうなというのが、私の個人的な感想です」と評した。当初、松岡社長と1対1で話していたが、気付くと周囲を10人程度の記者に取り囲まれていた。
映連は、新年記者発表会を毎年1月末に開催し、興行収入、動員、邦画、洋画の公開本数、全国の劇場数の増減など、当該年度の日本映画界全体の概況を発表する。加えて、加盟4社の社長、代表が各社の当該年度の自社概況と、新たなラインアップを紹介、説明するのが通常の流れだ。会見には我々スポーツ紙だけでなく一般紙、通信社、雑誌、ウェブメディア…もちろん、テレビの記者も足を運ぶが、フジテレビ問題で例年とは趣が違ってしまった感がある。中居氏とフジテレビの一連の問題が、本当に根が深く、甚大であることを改めて痛感させられた。【村上幸将】



