山崎育三郎(38)が、20代から抱き続けた、日本のオリジナルミュージカルの創作という宿願を、ついに果たした。2月28日に東京・東急シアターオーブでミュージカル「昭和元禄落語心中」(同所で3月22日まで。同29日~4月7日、大阪・フェスティバルホール。同14日~23日、福岡市民ホール・大ホール)が初日を迎えた。

「昭和元禄落語心中」は、戦前から平成に至る落語界を舞台に人々の生きざまを描いた、雲田はるこ氏の漫画が原作。18年に実写化したNHKドラマに出演した山崎が、撮影中から作品性に魅了され「ぜひミュージカルにしたい!」と熱望。宝塚歌劇団所属の劇作家・舞台演出家の小池修一郎氏(69)に、所属事務所・研音の明日海りお(39)と古川雄大(37)を交えての企画立ち上げを提案し、自ら明日海と古川に声もかけた。小池氏も雲田氏に直接、ミュージカル化が可能か話を持ちかけ、快諾され、企画が実現した。

山崎は、ドラマ版に続き天才肌で華のある落語家として注目され、豪放磊落(らいらく)な性格で周囲を魅了する初太郎(助六)を演じる。古川がドラマ版では岡田将生(35)が演じた、繊細な性格で初太郎の才能に焦りを感じながらも精進し「昭和最後の大名人」と称される菊比古(八雲)を、明日海がドラマ版では大政絢(34)が演じた、初太郎と菊比古と固い友情で結ばれ、懇意になり、その人生に大きく関わることとなる芸者みよ吉を演じる。

出演と企画を兼ねるだけあり、山崎の意気込みには並々ならぬものがある。古川と明日海を伴い、1月31日に都内で開いた製作発表では、落語の高座をイメージし、しつらえたステージ上で落語を1席、披露した。日本のオリジナルミュージカルの創作にこだわるルーツは、12歳のデビュー時にある。1998年(平10)に、シンガー・ソングライター小椋佳(81)が企画・音楽を担当し、87年~08年まで上演されたジュニアミュージカルシリーズ「アルゴミュージカル」の「フラワー」でデビュー。同シリーズは基本、原作のないオリジナル作品を上演してきた。

その点を踏まえ、記者は質疑応答で、日本のオリジナルミュージカルへの憧れを、実際に形にすべく動こうと思い始めたのはいつか? と聞いた。山崎は、20代の頃に韓国発のミュージカル「サ・ビ・タ~雨が運んだ愛~」に出演したことが契機だと明かした。「20代で、韓国オリジナルミュージカルの『サビタ』に出会った。韓国ミュージカルの世界への第1歩で、韓国でも記者発表した。パーティーしていただき、焼き肉を食べた時『僕達は、この国のミュージカルを(世界に)出したいんだ』と言われた」と当時を振り返った。そして「日本では、日本のオリジナルを世界に出すという話には、なっていなかった。すごいなと衝撃を受けた。まず、自分自身を高め、やるという時に、集まっていただけるように自分を高めようと思った」と、まるで昨日のできごとのように、熱を込めて語った。

会見から、およそ1カ月をへて初日前日に行われた取材会で、山崎の声は弾んでいた。「8年前にNHKのドラマで出会い、この作品はミュージカルにしても、魅力的になるんじゃないかと、自分の直感と妄想から始まったものが、こうやって形になって、いよいよ初日。ワクワクする」と口にした声は、踊るようだった。

原作の雲田氏からは「ミュージカルで歌うってどういう感じになるの? と思われていたような」(山崎)反応もあったという。ただ通し稽古を見た同氏から「想像以上に、はまる。落語とミュージカルって、って、こんなにマッチするんだ」と評価されたと明かした。その流れの中で、取材陣から「音楽とか、どんな感じになるんですか?」と質問が出た。

山崎は、まず「落語も、ちゃんと師匠について稽古して、落語は落語のシーンで見せられる」と説明。その上で「和ものミュージカルということで、和楽器がずっと聞こえてくる感じかと思いきや、全くそうじゃなくて割と通常のミュージカルに近い」と音楽について具体的に言及。「それぞれのキャラクターに合わせた音楽…助六だったら、すごくパワフルでエネルギッシュなロックサウンドだったり。使い方が変わってくるので、いろいろなジャンル音楽が楽しめる」と説明した。

その後、撮影のために取材陣に1シーンのみ公開された。山崎は古川と並んでステージ上にしつらえられた高座に座り、落語を披露。バックにはアップテンポなロックサウンドが流れ、そこから2人で歌唱しながら、はしごを下りてステージに立つと、ステップを踏みながら伸びやかに歌った。

山崎が明かしたように、通常のミュージカル、そのもののシーンだったが、世界観、衣装…何より落語シーンは間違いなく和、そのものだった。「0から全て日本のチームで作り、お届けできる。日本のミュージカル界に新しい風を吹かせたい」。山崎が、新たな、そして大きな挑戦の第1歩を踏み出した。【村上幸将】