公開中の映画「五十年目の俺たちの旅」を、早起きして仕事前に見に行ってきた。2月1日に75歳、後期高齢者になった中村雅俊が主演、監督を務めた。テレビシリーズの初回放送から、配役が同じままで映画化さた期間が、1975年10月5日から2026年1月9日まで50年94日間と世界最長であることが認められて、ギネス世界記録に認定された。

先月31日に行われた舞台あいさつに登場したカースケ、中村はビロードのスーツをさっそうと着こなしていた。共演のオメダ田中健(74)とグズ六・秋野太作(82)も渋さを増して、元気いっぱいだった。今年8月に65歳になる記者にとっては中学2年後半の作品。まだ、マージャン、酒、たばこも知らない、いたいけな少年だった。

先月22日の「50周年記念 俺たちの旅 スペシャルコンサート」ではオメダの妹、真弓役の岡田奈々(66)の「青春の坂道」を生で聞けて大感激だったが、映画も最高だった。

「俺たちの旅」はお世話になった人たちを思い出させてくれる作品だ。中村良男プロデューサーは、後に日本テレビの番組宣伝部長を務めて「雅俊がね、雅俊がね」と若き日の中村のことを聞かせてくれた。

田中は1993年(平5)に映画「望郷」で日刊スポーツ映画大賞で助演男優賞を受賞した時のことが懐かしい。93年の田中は舞台「墨東綺譚(ぼくとうきだん)」の千秋楽と重なり、幕あいを縫って東京・丸の内の帝国劇場から高輪プリンスホテルに駆けつけた。舞台衣装の上にロングコートを羽織り、バイクの後部座席に乗ってもらってピストン輸送したのが懐かしい。田中夫人の元女優加賀千景のお父さまは、これまた日本テレビの番組宣伝部長の加賀義二さんで、大変お世話になった。

懐かしい人を思い出していると、人生で長い時間を共有した人の訃報が届いた。新宿二丁目のゲイバー「いれーぬ」の名物ママだったタケちゃん、金竹伊彦さんだ。週に5日、年間200回くらい通っていた。ワイドショー、週刊誌、芸能事務所の人が集まって宴を繰り広げていた。

「小林聡美と三谷幸喜の結婚」「岸谷五朗と奥居香の結婚」のスクープは、いずれも「いれーぬ」で知り合った人の情報だった。2018年(平30)の暮れに店を閉めてからは会う機会も減っていたが、2月14日の誕生日は毎年祝っていた。

還暦も過ぎて結婚している人間なら、人生で一番長く共に時間を過ごした人は伴侶であろう。一度も結婚したことがなく、夜な夜な酒場で過ごしてきた記者にとって、学生時代の江古田、社会人になってからの新宿ゴールデン街、六本木、麻布十番ときて、やはり圧倒的に新宿二丁目の「いれーぬ」で過ごした時間が長い。つまり、人生で一緒に過ごした時間は、タケちゃんが一番長い。

一昨年に父親、そして年明けには一番仲が良かった従姉(いとこ)が亡くなった。どんな時でも絶対に味方をしてくれる人間がどんどんいなくなってしまう。

人生の終焉を考えさせられる映画「俺たちの旅」、そしていれーぬのタケちゃんの訃報だった。【小谷野俊哉】