<キーンランドC>

ヴェントヴォーチェのルメール騎手は、スタートの不利をプラスに変えた。ゲートは五分に出たが、その後に両サイドから挟まれて隣のマウンテンムスメと接触。後方へ下がった。鞍上は「もう少し前でレースをしたかった」と話したように、中団からの競馬を描いていたが、向正面では後方2番手。当初のプランは白紙に戻すしかなかった。1200メートル戦では致命的な状況といっていい。

だが、そこからの切り替えが早かった。慌てて馬群の外を追い上げるのではなく、内に進路を取って脚をためた。芝が荒れてきて外差しが届く馬場。馬群がばらけるのを想定していたのだろう。4コーナーで前が開くと、すぐに飛び込むのではなく、外ビリーバーを押し出すように馬場のいいところへ出した。直線は2着ウインマーベルの後ろから内へ。たたき合いで半馬身抜け出した。

前半600メートル34秒5。流れが遅く、追い上げが容易だったこと、前がスムーズに開いたことなど恵まれたのも事実だが、その運を引き寄せたのはルメールの機転だ。4コーナーで外へ張ったのも、馬場のいいところを選ぶだけではなく、馬群を外へ流し、追い込み勢に(大外を回す)ダメージを与える効果もあった。転んでもただでは起きない。わずか1分9秒に名手のスゴ技が盛り込まれていた。