値千金の同点弾に「松坂世代」の絆がにじんだ。楽天渡辺直人内野手が、8回に自身初の代打アーチで2戦連続サヨナラ勝ちを呼び込んだ。

大喜びで迎えた平石監督が「チャンスメークに期待していたから、本塁打という意味では99%期待してなかった。練習でも見たことない打球」と冗談めかせば、渡辺直は「練習ではもうちょっといい打球を打ってます」と切り返す。そして「監督に送り出してもらって、最高の恩返しができた」と心底うれしそうだった。

7回に1度準備をして出番が流れると、即座にターゲットを切り替えた。「8回は左、モイネロが来る、と予測していた。集中力を切らさないようにスタンバってました」。4月29日以来の8打席目。2球で追い込まれても、際どいボール3球を見極めた。平石監督が「3-2にもっていった時点で直人の勝ちでしょうね」と舌を巻いた勝負度胸。6球目、ファーストスイングで左翼席に引っ張り込んだ。今季初安打となるプロ通算7本目に「打ち慣れてないからね。もうちょっと余韻に浸りたいけど、全く覚えてない」と笑った。

4月12日のソフトバンク戦でモイネロから死球を受け、史上21人目の通算100死球まであと「1」。強打者でなくとも、チームのために体を張ってきたファイターの勲章だ。内野手登録の銀次が緊急でマスクをかぶった同7日のオリックス戦では「小さい頃につけて以来」というプロテクターに身を包み、ブルペンで不測の事態に備えた。ムードメーカー役も率先してこなす姿に、指揮官は「本当に大きな存在」と敬意を表する。「いつもみんなが頑張っている姿をベンチで見てきた。今日は力になれて良かった」と顔をくしゃくしゃにした。【亀山泰宏】