ソフトバンクのキーマンへのインタビュー企画「S15(サァイコー!)な男たち」の今回は、本多雄一内野守備走塁コーチ(35)です。

コーチ1年目の昨シーズン、工藤監督の掲げる「走塁改革」の先頭に立ち、周東らを育てた。2年目となる今季は、二塁手を育て、さらにレベルの高い「走塁改革」の実現を担い、3年ぶりのリーグV奪回へ選手を導く。【取材&構成・浦田由紀夫】

   ◇   ◇   ◇

-コーチ就任1年目だった昨シーズンは、どんな1年だったか?

本多コーチ 選手をやめてすぐだったので、半信半疑で進んでいました。今年は、昨年まではできなかった「把握する力」は少し出てきたかなと感じています。

-周東と牧原を中心に、二塁手争いも激化しています

本多コーチ 個人的にはこの2人は「ポジション争い」というレベルではないと思う。「ポジション争い」というのは、レギュラーがドンといて、そこにみんなが挑む、というような構図です。2人ともまだそのレベルに達していない。だから、ボクがレベルを上げてやらないといけない。

-昨シーズンは一塁内川、三塁松田宣とベテランが頑張ったが、それぞれのポスト的な選手も育てないといけない

本多コーチ レギュラーというのは、故障なく1年しっかり固定できるのが一番いい。でも、どんな状況になっても自分が困らないように準備しておかないといけないと思う。ケガや不調でスタメンから外れる状況が来てから考えてるようではダメです。

-「走塁改革」のレベルアップも求められる

本多コーチ 工藤監督からは「1つ先、2つ先の塁へ」という積極的走塁ができるように求められている。走塁における「状況判断」が大事なので、その力がつくように指導してます。

-一塁コーチで、一塁に出塁した選手によく声をかけていますが

本多コーチ こんな打球だったらここまで走るとか、選手に判断する状況、情報を耳打ちしている。案外、選手は興奮しているので、塁上では冷静な判断ができないことがあるんです。

-昨年は周東を育て上げた

本多コーチ 盗塁は相手のスキをつかないといけない。それも事前の準備がいる。代走という特別な仕事なので、試合中から投手と捕手が何を考えているかを「予習」させた。今季は相手も研究してくるので、その「準備力」もレベルアップさせたい。

-コーチ業の勉強は? 

本多コーチ 現役時代から本も読んでましたが、この1年で読んだ本で印象に残っているのは「いい姿、いいリズムな時こそ、素直で謙虚に」という言葉。いい時は何もしないでいいや、と思う選手が多い。いい時こそ、謙虚にならないといけないし、コーチとしてもチームが調子がいい時こそ、謙虚に教えていかないといけない。もちろん、ノートをつける作業も多くなりました。

-2年目のコーチとしての今季の目標は? 

本多コーチ チーム状態が悪い時に走塁、守備でチームに勝利をもたらすようにしたい。選手に対してはやさしいだけではダメだし、時には厳しく、ガツンと言わないといけない時もある。選手に一方的にこっちの考えを押しつけるのではなく、選手自身に考えさせて、答えさせる。そのプロセスは、コーチとしての自分の成長になると思っています。

◆本多雄一(ほんだ・ゆういち)1984年(昭59)11月19日、福岡県出身。鹿児島実-三菱重工名古屋を経て05年大学・社会人ドラフト5巡目でソフトバンク入団。10、11年に連続盗塁王。ベストナイン1度(11年)、ゴールデングラブ賞2度(11、12年)。18年に引退後、19年から1軍内野守備走塁コーチ。右投げ左打ち。