歌手でお笑い芸人のタブレット純(50)が11月26日に、初めてのアルバム「タブレット純大いに歌う~中川博之作品集」(日本コロムビア)を発売した。
作曲家の中川博之さん(14年没=享年77)はムード歌謡の第一人者と言われた。ヒット曲は「わたし祈ってます」(敏いとうとハッピー&ブルー)「ラブユー東京」(黒沢明とロス・プリモス)「たそがれの銀座」(同)「夜の銀狐」(斉条史朗)など多数。
アルバムは、その珠玉の作品の中から、タブレット純が自ら選曲したカバーアルバムである。
タブレット純は発売にあたり「尊敬する『ムード歌謡の父』たる中川博之先生の紡いだ珠玉の世界に、自分が触れられる喜びをとても幸せに感じております。作品に託された思いや、大衆が流した涙を胸に、精いっぱい歌えたらと思っております」とコメントしている。
同日に都内で発売記念コンサートを開催した。ステージでも「小学校6年の時、そろばん塾の帰りに同級生のお母さんから『ラブユー東京』と『たそがれの銀座』のレコードを借りまして、そこから中川博之というお名前を知りまして。その後、中川先生の作品を買うということを続けて来ました。今回、アルバムを出すことができて、まさかこんな日が来るとは…」と感激を口にした。
コンサートの第1部で、前出の楽曲のほか「足手まとい」(森雄二とサザンクロス)「意気地なし」(同)「サヨナラ横浜」(石原裕次郎)など、アルバムに収録された中川さんの世界をたっぷり歌い上げた。
第2部ではオリジナル曲やシャンソンをさまざまな衣装で披露した。会場には中川夫人で作詞家の高畠じゅん子氏も姿を見せた。
タブレット純は現在「ムード歌謡漫談」や声帯模写で、芸人としても活躍している。元々はムード歌謡グループ、和田弘とマヒナスターズの元ボーカルで、歌謡力は折り紙付きだ。
中性的風貌、柔らかい物腰と口調の半面、歌声は低音で聴かせる。
タブレット純の今があるのは、小学5年から始めた中古レコード収集にある。いじめられっ子で、現実逃避するために始めた。AMラジオから流れる歌謡曲を聴きあさり、気に入った歌手の旧譜に興味を持ち中古レコードを集めた。
現実逃避はレコード収集だけではなかった。プロ野球、相撲、プロレスにも興味を持ち、レコードと同様に古い雑誌や資料を集めた。かつて取材に「オンタイムでも見ていましたが、(興味は)ほとんど古い方向(過去)で、それぞれの専門誌のバックナンバーを買いに行きました。古本屋と中古レコード店めぐりを同時期にやっていました」と話した。
昭和という時代、生活様式をこよなく愛している。今もあえて下町の風呂なしの長屋風住宅に住み、毎日銭湯に通っている。3000枚以上という中古レコードや、古い雑誌類は入り切らないので、もう1部屋借りて倉庫にしている。
「多分、根っからそういう生活が好きで、むきにやっているということはありません。マンションに移るとか、そういう気はまったくないです。下町が好きなんです」。
コンサートのアンコールでは、銀ラメのホットパンツに天使のリングと羽根を付けた姿で、「帰ってきたヨッパライ」(ザ・フォーク・クルセダーズ)を歌った。タブレット純のキャッチコピー「異能の人」(人とは違った特別の才能や能力を持った人)の、本領が発揮されたコンサートでもあった。【笹森文彦】



