園部優月、16歳。ブラインド(5人制)サッカー界で台頭したヤングストライカーだ。8月のイングランド遠征で史上2番目の若さで日本代表デビュー。30日に開幕するアジア選手権(タイ)のメンバーにも抜てきされた。ゴールへの執着心、柔らかいボールタッチ、状況察知能力に優れ、高田敏志監督(52)が将来の背番号10を託す逸材。日本代表を活性化させ、20年東京パラリンピックのメンバー入りも期待される。

■30日からアジア選手権

16歳になったばかりの高校1年生。164センチ、48キロのきゃしゃな少年が、ボールを持つと一変する。21日から3日間、千葉市で行われた日本代表強化合宿。園部は実戦練習で川村主将ら主力メンバーと激しくボールを奪い合った。コンタクトプレーでも決して引けを取らない。最終メニューのPK練習では強烈なシュートをゴール左上に突き刺し、ガッツポーズで喜びを表した。

「うまくできたのは最後のPKだけでした。紅白戦では思い通りのプレーができなくてストレスがたまりました」。園部は少し悔しそうに合宿を振り返った。ただ、高田監督の評価は違っていた。「普通にやってましたね。期待通りです。イングランドでも自分のプレーをしていたんですよ」。ボールを両足で柔らかく包み込むようなドリブル、瞬時のボディーターン、どんな状況でもゴールに向かう執着心、状況察知能力。天性の資質を備えた逸材は8月末の海外遠征で代表デビューした。

イングランド代表との3連戦(1勝2敗)の1、3戦目に途中出場。190センチ前後の大男たちにはじき飛ばされながらも次第に順応し、合計10分ほどのプレー時間だったが自らのスタイルをピッチで表現し、イングランド代表関係者に絶賛されたという。そして、日本代表が7大会ぶり2度目の優勝を狙うアジア選手権メンバーにも名を連ねた。

「代表に入ったばかりで戦術理解が不足しているのは仕方ない。あとは経験です。タイでも出場機会はあると思います。楽しみにしていてください」と高田監督。日本代表の主力FP(フィールドプレーヤー)は川村主将を除く黒田、佐々木ロベルト、田中が40歳代。園部の台頭はチームを活性化し、戦力の底上げにもつながる。

昨年1月に日本代表強化指定選手に選出された。進学を控えて学業を重視したために代表活動は控えめだったが、高校に進んだ今春からはサッカーに費やす時間が急増し、プレーが磨かれている。「目標の選手は川村さんです。大会ではチームのためにドリブルからシュートの得意な形で点を取りたい。東京? まずメンバーに入れるように頑張らないと」と園部。川村の背番号10を引き継ぐための戦いが始まる。

◆園部優月(そのべ・ゆづき)2003年(平15)9月1日、群馬県富岡市生まれ。3歳の時、網膜細胞芽腫(悪性腫瘍)で両目の視力を失った。幼いころから陸上、水泳、ゴールボール、フロアバレーボールなどに親しみ、小5から日本ブラインドサッカー協会のキッズトレーニング等に参加。東京の筑波大付視覚特別支援学校中学部を経て現在高等部1年。中1から同校在学生、OBらのクラブ「free bird mejirodai」でプレーし、今年6~7月の日本選手権で準優勝した。昨年1月から日本代表強化指定選手。