競泳男子200メートル個人メドレーで萩野公介(21=東洋大)が1分56秒61で銀メダルを獲得した。最後の五輪となるマイケル・フェルプス(31)と直接対決。打倒フェルプスで練習を積んできたものの、約2秒差の完敗。レース後は憧れのスイマーに引導を渡せなかった悔しさを吐露した。萩野は400メートル個人メドレーの金、800メートルリレーの銅に続き3つ目のメダル。

 銀メダルの喜びはない。400メートルに続き金メダルを狙った200メートル個人メドレー。萩野は最後の50メートルを5位で通過すると、猛追を始める。スタミナを切らしたロクテらを抜き2位まで順位を上げるが、フェルプスの背中は遠い。1秒95の大差をつけられた2位。「タイムが遅い。肉体的、精神的な強さが足りない」。金メダルを逃した敗者の顔で言った。

 当初は瀬戸との一騎打ちが予想された本命の400メートル個人メドレーを制して勢いに乗る作戦だった。事前の欧州合宿から、平井コーチも同種目に特化した練習を続けた。400メートル個人メドレーは目標通りに金メダルを獲得したが、その反動も含めた疲れは想定を超えていた。800メートルリレーは銅メダルも200メートル自由形は7位。平井コーチは「コンディションの問題。わたしの指示ミスもあった」とかばうように言った。

 小学4年だった04年アテネ大会。フェルプスの6冠達成をテレビで見た。中学2年だった08年北京大会では前人未到の8冠を目に焼き付けた。もう1人のスーパースターで五輪金メダル6個のロクテにも憧れた。複数種目への挑戦のきっかけになった2人との直接対決。引導を渡し、世代交代を図る決意は強かった。

 フェルプスは今大会が最後の五輪と明言する。直接対決のチャンスに完敗したショックは大きい。練習から瀬戸とともにフェルプスのことも頭に浮かべて泳いできた。「良い勝負ができる準備をしてきた。勝負できなかった悔しさはすごくある。実力不足が最大の要因」と自らを責め続けた。

 今大会はくしくも金銀銅のすべてのメダルをそろえた。今後は20年東京大会を万全で迎えるため、昨年骨折した右肘の手術可否を平井コーチと話し合う。その判断によって、背泳ぎなど出場種目を増やすかどうかも決める。フェルプスには完敗したとはいえ、初めて金メダルを獲得した意義は大きい。平井コーチは「(東京大会では)金銀銅ではなく、金金金になるようにしたい」とアスリートとしてステップアップした萩野に期待を込めた。【田口潤】