親子の悲願が結実した。レスリング男子グレコローマンスタイル59キロ級で銀メダルを獲得した太田忍(22=ALSOK)の地元青森で歓喜の声がこだました。同県五戸町立公民館で14日、パブリックビューイングを開催。日付が変わった午前0時過ぎ、観戦に訪れた父陽一さん(50)が思わず跳びはねた。準決勝でバイラモフ(アゼルバイジャン)にがぶり返しからフォール勝ち。メダルを確定させ、「大技を狙うのはコツコツ後ろをとるのが面倒くさいという考えがある。あいつらしい」と喜んだ。
1年で「380日」、親子鷹で練習と向き合った。陽一さんは自宅近くの道場で小2から指導を続けた。盆も正月も休みはなく、運動会の午後も汗を流した。長い時には夕方から朝5時まで。「世界1位になるには世界で一番練習すればいい」。高校時代にレスリングを経験していた父は妥協を許さなかった。
素質と熱量があった。体幹を鍛えさせるため腕立ての姿勢をキープする基礎練習を命じた時だった。所用で外に出ると、息子に練習をさせていたことを忘れた。1時間以上たって慌てて戻ると、真剣な表情で続けていた。「とにかく体幹が強かった。小学生からバックドロップをしていた」と馬力は人一倍あったという。小5のころの全国大会。格上の相手に、ことごとく技をはね返された。しかし、「あいつニヤッと笑ったんだよ」と息子の底知れない闘争心に身震いした。
「忍」の由来はラジオから流れてきたアナウンサーの名前。「『押阪忍です』って良い声でさ。これだ!
と。忍耐の忍だしね」と今では「忍者レスラー」の愛称もついた。
金メダルは逃したが、父には楽しみができた。「久々に負けて泣くところを見た。小さい頃を思い出し、こみ上げてきた。東京で金メダルを取れるところを見られるかな」。4年後へ思いをはせた。【島根純】



